【曼珠沙華】 炎に落ちる075



 開け放たれた縁側に腰を降ろし、肩にもたれ掛かる桂の手を握った俺は、もの凄く心配になった。

きっと、じいちゃんの具合は悪いんだろうな・・・・。
こんなに動揺して、可哀そうな程震えている。
桂がこんなに怯えるなんて・・・・。


「きっと助かるよ。大丈夫、きっと.......」
俺が話しかけると、手を離して立ち上がる。

「桂.......?」
下から覗き込んだ桂の顔は、ものすごく青ざめていて。

「座っとく方がいいって。......お前の携帯ここに置いておけよ。ばあちゃんからだったら、俺が代わりに出てやるから。」
そう言ったが、桂は俺の方を見ない。

「桂、.......おいっ!!聞いてんのか?」
本気で心配になって、つい大きな声を出してしまった。

「分かってるよツ!!」

肩を落としながらも、大きな声で怒鳴る様にいうからビックリする。



「........千早は、..........こんな気持ちになった事ないからわからないんだ。」
そう言って俺に背を向けた。

「..........そりゃぁ............、俺んち誰も入院したことないし、分かんねえけど..............。」

うちは、みんなバカがつくほど元気で、病院の世話になったのは、俺が骨を折った時ぐらいだ。

でも、桂の言い方はちょっとムカつく。
俺は桂が心配なだけなのに・・・・。

「.........、もう置いて行かれるのは嫌なんだよ。みんなオレの周りからどんどんいなくなる。堪らないよぉ。」


...............掛ける言葉が見つからない。

離婚して、それぞれ外国で暮らしている両親。
桂の事など忘れてしまったのか.......。

自分の子供を親に託して、どんな事情があるのかしれないけど..........薄情すぎやしないか?
でも、それは俺が立ち入る事じゃないし。桂が寂しいなら、俺が側にいるから.........。

「俺はお前の側にいるからな。絶対置いていかない、約束する。」
そういうのが精一杯だった。

「........約束?!」

「うん、絶対、約束する。」

桂が俺の傍に戻ってきたから、その手を掴んで言った。心の底からそう誓ったんだ。桂の手を離さないって。




しばらくすると、自宅の電話が鳴って、それは病院にいる桂のばあちゃんからだった。

じいちゃんは脳溢血で倒れたらしい。
すぐに手術を受ける準備が始まって、まだ時間がかかるそうだ。
しばらくはばあちゃんも付き添うから、自宅には帰れないという話。

「後で着替えとか持って行くから。・・・・うん、・・・うん、大丈夫だよ、千早がいてくれるから・・・。」
受話器の向こうで交わされた会話で分かるほど、ばあちゃんは桂が心配なんだな、と思った。

「ちょっと、桂・・・、俺に代わって。」
そういうと、受話器を受け取る。

「あ、千早だけど・・・、秀治の事は心配しないで。俺んちに来させるからさ。だから、じいちゃんに付いていてよ。」

『千早くん、・・・有難うねぇ、お母さんたちにもよろしく言ってね。』

「はい、大丈夫だから。・・・また後で、一緒に着替えとか持って行くからね、なんか欲しいものあったら電話してください。」

『ええ、有難う。お言葉に甘えて・・・・、秀ちゃんの事よろしくお願いしますね。』「はい。」


受話器をそっと置くと、桂の顔を見る。

「千早ぁ...........。」

そういうと、俺に抱きついて来たけど、その表情はまだ少し不安そうだった。






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