【曼珠沙華】 炎に落ちる077



 桂のじいちゃんには悪いけど、夏休みの間桂と過ごす事が出来て、俺は嬉しかった。

何度かは病院にも付いて行き、ばあちゃんと交代して付き添いもしたが、その度に身体が不自由になる事の大変さを身にしみて感じる。自分が何気ない毎日を送れるということは、どんなに恵まれている事なんだろうと思った。

実際は当事者にしか分からないんだろうけど、昨日出来ていた事が今日は出来なくなる。そんな生活が自分の明日に起こるなんて考えもしないもんな.......。


「桂くんも色々大変よね。あの年で高齢者の面倒も見なきゃならないなんて......。」

久しぶりに家へ帰って来たアネキが、テーブルの上のケーキを口に入れながら言った。
決して出戻りではない。友田さんが出張で外国へ行ってしまい、結局一人になると寂しくなるんだろう。昨晩から俺の隣の部屋で暮らしている。

「桂も初めは動揺して大変だったけど、今は馴れて介護の勉強もしているらしいよ。」

ばあちゃんも腰が悪いし、じいちゃんの介助をするのは力と体力がいる。コツもあるんだろうけど、半身に麻痺が残っているから、食事をさせるのもたいへんらしかった。

学校が始まると、自然に時間もずれてしまい、俺が桂の家に行く時間も減ってしまった。
じいちゃんもまだ退院は出来なくて、3か月間は今の病院にいるから桂も時々見舞いに行くみたいで。
尚更、二人になれる時間は少なくなった。



「そういえば、千早の受ける大学ってちょっと遠いじゃない。通うの大変じゃない?」
急に俺の話になって、ちょっと焦るが「まあな。」と答えた。
ここからだと、電車の乗り換えを入れて2時間ぐらいかかる。一限からの授業はきついかな、と思ったが、生憎そこぐらいしか入れる大学が無かった。

「私の住んでるアパートに近いじゃない?!何なら同じアパートに住む?」
そう言って笑っているが、近くに住んだらこき使われそうで怖い。アネキは昔から人使いが粗いから、小学生の時は使い走りをさせられたものだ。きっと、俺が女の子を苦手になったのはアネキのせいだと思う。

「そういえば、友田さん前に未開の地へ行くかもって言ってたけど、ホントに行くの?」
ちょっと思い出して聞いてみる。

「今はまだ下っ端だからねぇ、そんな大きなプロジェクトには、参加させてもらえないんじゃないかな。」

「そうか.......、でも行きたいって言ってたよな。きっとあの人は行くんだろうな.......。そしたらアネキも一緒に行くのか?」

「.............、そうねぇ、どうかな?!未開の地っていうのが引っかかるよね。だって、病院もないとかあり得ないもん。子供が出来たら心配よ?!」
リビングで雑誌に目をやりながら、半ば人ごとのように言うから可笑しくなるが、これが一般の考え方だろうな・・・。
俺だって考えられないよ。

こんなに便利な世の中で育って、わざわざ不便を覚悟でそこに住むっていうのは・・・・・。


まぁ、よっぽどの事がなきゃ住めないな・・・・・。
桂と二人なら住めるかな・・・・・?!
・・・・・、あ~分かんねぇな。



最近は、なんでも俺と桂に置き換えて想像してしまうクセがついた。
それだけ、リアルに自分たちの将来を考えているって事だ。

目の前の大学進学にしたって、桂が4年間勉強するなら俺も、って具合に・・・。
アイツに合わせる訳じゃないけど、同じ学生気分でいたいだけ。そうすれば一緒に居られるような気もするし・・・。

とにかく、今の俺は桂の事ばかりが頭をよぎるんだ。
それだけ好きになってたって事かな?!









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