【曼珠沙華】 炎に落ちる082



 その日、朝のホームルームの後で、担任から職員室へ来るように言われた俺。

思い当たる節はない。が、なんだかドキドキする。
ひょっとして、大晦日にピアス男とモメて警官から逃げたのがバレた、とか・・・?!

それってかなり前の事だよな・・・。


不安をよそに、なぜか廊下を歩く俺の後を柴田がくっついて来る。

「ついに小金井くん、やっちゃった?なんか問題起こしたんじゃないの?」
と、やけに嬉しそうだ。

「ば~か。こう見えても俺は真面目ちゃんなんです。なんで呼ばれるか分かんねぇ。」
くっつく柴田の尻を後ろ蹴りしながら歩くが、ニヤケながらも俺について来てくれるってのが心強い。
口は悪いけど、一応は心配してくれているのかも。


「失礼します。」

職員室のドアをガラッと開けて声をかけると、数人の教師がこちらを見た。

奥の席に俺の担任の姿があったが、その横で立っているのが生活指導の教師だったから焦る。
本気で心配になってきた・・・。


「あの、・・・・何か?!」
小さな声で言う俺に、生活指導の教師が一冊の雑誌を見せた。

「コレ、小金井だよな?!」

「・・・・はい。」

そこには、先日天野さんの店で撮られた写真が載っていた。

今初めて目にするが、赤い紅を引いた俺が、隣の女性モデルを食い入るように見ている。
その目つきは、自分で言うのも変だけどエロい。

赤い紅のせいか、それともあの女性カメラマンの言葉に煽られたのか・・・。

それにしても、女の着物を素肌に羽織っていて、これは......................。
こんな風に映っているだなんて、思ってもみなかったけど、ちょっとゾクッとした。


「バイトか?」
そう言われ、視線を天井に向けて考えるが、お金はもらっていない。

「いいえ。知り合いに頼まれて・・・、この写真だけ撮りました。バイトじゃないです。」

何か悪いことをしたんだろうかと緊張するが、「そうか。知り合いに頼まれたのか・・・。まあ、バイトも禁止しているわけじゃないが、今は受験前だからな、一応。」と言った。

「それにしても、ちょっとエロイな・・・・。小金井がこんなに綺麗になるとは思ってもみなかったよ。」
そういうと、二人はまた雑誌に目をやる。

そんな事を言われても、なんと答えればいいのか・・・。
一応の指導を受けて、職員室を後にすると、廊下で柴田が待っていた。

「どうだった?」
柴田は俺の肩に手を回すと、顔を近づけて聞いてくる。

「別に、写真の事を聞かれただけ。」
そういうと、柴田の顔を手で押しやる。

「なになに、写真って・・・!えっ、もしかしてヌードとか?!」
やけに嬉しそうに聞くからムカついた。

「バーカ、違うよ。美容院に置く雑誌に載せてもらったのが分かっただけだ。俺だって今日初めて見たもん。」

「お、モデルさんですか?!すげぇじゃん。・・・今度見してよ。」

「ヤだよ。見んなよ、ハズいから・・・。」

そう言って、俺が速足で廊下を歩くと、柴田はついて来ようと必死になった。
俺も負けずとさらに速足で教室へと向かうが、すれ違った教師に眉をしかめられ、二人でゆっくり歩幅を合わせる。






- - - 
家に戻った俺に、母親の第一声。
「アンタ、こんなエロイ顔出来んのに、どうして女の子が寄って来ないのかしらねぇ?!」

それは、母親の口から出るとは思えない言葉。
見ると、店のテーブルの上にさっき見せられた雑誌が置かれている。

「あれ、・・・それ?!」

「さっき天野さんが置いていってくれたのよ。この間はありがとうって・・・。お礼に髪の毛切ってくれるそうだから、これから行ってきなさい。」

「え・・・?ホント?タダで?」

「そうよ、早く行ってきなさい。」


俺は天野さんのお言葉に甘えて、髪をカットしてもらう事にした。

流石に伸びきって、自分でも鬱陶しいと思っていたんだ。
タダで切ってもらえるんなら有難い。


部屋に戻ると、早速着替えて美容室へ向かう。

途中、大通りに出ると、俺の頭の片隅に桂の顔が浮かんできた。

天野さんに会うのを良くは思わない桂。
別に、義理立てする必要はないけど、ちょっとだけ後ろめたく思うのは、やっぱりカラダの関係を持った人だからか・・・。
そんなの、桂と深い付き合いになる前の話。
いつまでも気にする方がおかしい。


俺は、首をぶるっと震わせると、美容室のドアを思い切り開けた。





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