【曼珠沙華】 炎に落ちる083


 「いらっしゃいませ~」

元気に挨拶をされて、ちょっと戸惑った。

いつもは俺が、こんにちは、と挨拶をして入るのに、今日は先を越されてしまう。


「あ、、、、千早くん!!」

エリコさんは、店に響き渡るような大きい声で俺の名前を呼んだ。しかも、ビックリしたみたいに・・・。


「こんにちは。・・・あの、天野さん・・・」
と言いかけて奥の方に目が行くと、カーテンを開いて覗く天野さんの姿があった。

「あ、こんちは。」
「やあ、お母さんに聞いた?」

「はい、お言葉に甘えてカットしてもらおうかと・・・、いいんですか?」
「もちろん、おいで。」

手招きされて奥へと行くが、その俺を見つめる熱い視線を背後にビンビンと感じる。
なんだろう・・・・・?



天野さんは自らシャンプーをしてくれると、「ぅわあ、なんかこんなに千早くんの頭を撫でまわすの久しぶりだなぁ。」と感激の様子。

「この前、写真を撮る時にヘアメイクしてくれて、俺の顔を撫でまわしてましたけど.....。」

「あ、そうだっけ?!あの時は完全に仕事モードになってたから・・・感激が薄かったんだよ。」

- え・・・、今は仕事モードじゃないっての?


俺は顔にガーゼを掛けられているので、天野さんの表情は分からないけど、耳元で息遣いが聞こえると変な感じがした。

それに、しつこいくらいに後頭部を撫でられて、ついでに耳朶まで触られて.....。

「あ、天野さん・・・・?」

「フフフ、気持ちいいですか?」

「・・・・ま、ぁ・・・。真面目にやってください。」

「ふふっ、ごめん。久々に遊んじゃった。」

「・・・・・・・・・。」




洗い髪にタオルを巻かれて、鏡の前に座る。
が、なんとなく周りの視線を感じて、鏡の中の景色を見た。


お客さんは二人。若い女性だったけど、こっちを見ている。
・・・なんでだ?男の客だってくるだろ?!

不思議に思った。
もう何度もこの店には来ているけど、こんなにまじまじとお客さんに見られたことはない。


天野さんが自分のハサミを用意して、俺の横に顔を近付ける。

「どのぐらい切る?・・・千早くんは長い髪が似合ってるよ。あんまり切りたくないんだけどな・・・。」

「・・・じゃあ、襟足隠れるくらいで。」

そう言って、首の付け根を指差した。
すると、俺の周りから「え~っ。」という小さな声が聞こえてくる。

一瞬、目だけを横に向けて見ようとするが、誰が言ったのか分からなかった。


「まあ、オレに任せなさい。いい感じに切ってあげるからさ。」

自信たっぷりに、天野さんが言って、俺は任せる事にする。
自分のヘアスタイルには、特に興味がなく、面倒なんで縛れるくらいがいいんだ。


そのうち眠くなると、俺は目を瞑って終わるのを待った。

その時、周りのささやきが耳に入るが、どうやら雑誌の人とかナントカ言っていて、きっと写真の載った雑誌を見たんだろうと思った。ここは美容院だし、あれを目にする人もいるんだろう。





千早着物編

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