境界線の果てには。(022)

その日、いつものように大学までの道を歩いていると、広斗の携帯が鳴った。

-だれだよ朝っぱらから・・・

上着のポケットから取り出すと、画面を見て「ゲツ」と声を上げる。

「はい、俺。・・・・うん。・・・うん、・・・え?」

電話をかけてきたのは、広斗の母親。

一時は、事故で息子を亡くしてしまうかもしれないと心配をかけた。

「・・・それでね、先生が案内状をくださったのよ。ヒロの住んでるところに近いらしいし、なんかあったら来てくださいって。」

「へえ、そうなんだぁ・・・わかった、なんかあったら連絡してみるわ。じゃあな。」

電話を切ると、広斗は遠くを見つめて過去をさかのぼる。

「スエナガ タモツ」

そう口に出した名前は、事故の時入院先の病院で広斗の主治医だった医師。

大学病院を辞め開業医になったそうで、広斗の実家に案内状が届いたらしい。

-なんでわざわざ俺のとこへハガキなんか?

あれから3年。

いろんな意味で俺を救ってくれた人だ。

.........けど、俺を境界線に立たせた人でもある。

お世話になった”心療内科”の先生。

あの事故で負った、躰の傷はきれいに消えたけど、心には大きな問題が残った。

それを、なんとかしようとしてくれたんだよな。医者のくせに・・・さ。

「オおーっす!寝不足か?」

校門のところで高木と会えば、広斗の過去はまた封印されていった。



スポンサーサイト

コメント

非公開コメント