【曼珠沙華】 炎に落ちる086



 中学生の息子を残して、外国へ行ってしまった両親は仕方がないとして、身体を悪くした祖父の事まで気に掛けないといけない桂にとって、俺とバカな話をするのが唯一の楽しみとなっている。

天野さんと親しくするのが気に入らないというよりは、俺を取られるような気持になるから、それがイヤなんだろうな。


「桂くん、・・・キミってゲイじゃないよね。バイって感じでもないし・・・・千早くんをこの先も思い続ける自信がある?もし、将来女の子と普通に付き合う事になった時、彼を傷付ける事になるんじゃないのか?」

天野さんは、もう一度ソファーに腰を降ろすと言った。
膝を組み、その上に肘をついて顎を乗せると、ぼんやり桂を見た。天野さんが何を言わんとしているのかは、俺にも分かる。
ゲイの俺は、桂にとって重荷になるのかもしれない・・・。

桂は、普通に結婚して、子供も作れて、俺と居たら得られないものを自分の意志で手にする事が出来るんだ。

「・・・ゲイとか普通とか、オレにはどうでも良くて、ただ傍に千早がいることが大事なんです。」

「・・・そうか、・・・そんなに千早くんの事が好きなら、オレがとやかくいうことじゃないよな。」

そういうと、天野さんは立ち上がって床に座り込んだ桂の肩に手を置いた。そっと、一度だけポン、とするとリビングのドアを開けて出て行く。
「帰る時、ここに置いたカギを閉めて行って。下のポストに入れておいてくれ。オレは仕事に戻るし、ゆっくり二人で話しなよ。」


玄関で天野さんの声がしたかと思えば、すぐにドアが閉まる音がした。

桂の腕を取ると、俺は引っ張り上げるようにして自分に引き寄せ、ギュっと背中に腕を回す。
言葉で表すには難しすぎて、桂の気持ちを受け取るのに一番わかりやすい方法を選んだ。

そっと首の後ろを掴んで、目の前の唇に触れる。

触れ合う唇から、俺の想いが伝わればいいんだけど・・・。

俺が桂の支えだって言うんなら、桂だって俺の支えになってくれている。
この先に、どんな試練が待っていようと、俺と桂はこのまま離れないし、きっと二人でいることが俺たちの『普通』になる。

長い口づけを交わしながら、互いの気持ちも交わると、ゆっくり俺は目を開けた。
メガネ越しに長い睫毛が揺れると、桂の瞼も少し開く。視線が絡んで、また口づけを交わすと、どんどん気持ちも高揚していった。

桂をソファーに座らせると、俺は膝をたててその前に向き合う。
そのまま桂の胸に顔を埋めては、高鳴る鼓動を確認した。

耳に入る鼓動のリズムを聴きながら、今度は桂の服をたくし上げ、露わになった胸に唇を当てた。




スポンサーサイト

コメント

非公開コメント