境界線の果てには。(023)

講義の最中に、何気なく窓の外へ目をやった広斗。

視線の先に、工事中のクレーン車の上の部分が目に入り、一瞬フラッシュバックの様な目眩に襲われる。

朝の電話で昔の事故の事を思い出したせいか・・・

こうなると、次にどうなるのか分かっている。

ドクツ   ドクツ   ドクツ

-ほらほら心臓が、自分の意志じゃないのに大きく波打つ。

広斗は俯いて口を覆うように自分の両手をかざした。

ゆっくり呼吸をするが、息を吸いすぎないよう注意する。

そして、手の中に吐いた息を再び吸い込む。

二酸化炭素を吸わないと、酸素ばかりで肺が機能しなくなる。そのうち手がしびれ、力が出なくなったらアウト。

もう何度も経験済みだ。

大丈夫、俺は倒れない・・・自分に言い聞かせた。

「広斗?大丈夫か?」
隣に座る真咲がこちらを覗きこむが、目だけ真咲に向くと、大丈夫だと視線を送る。

普通は、女の子と密室でいない限りは倒れる事が無い。

それでも、事故を思い出させる何かに出くわす度、パニック障害に陥る。

最近ではなかったんだけどな・・・

真咲が、そっと俺の背中をさすってくれる。正直、あんまり意味はないんだけど、気にしてくれてるってだけで安心することもある。

だんだん気分が落ち着いてきたので、口から手を離すと真咲に手で合図した。

この間は泣きじゃくってみたり、情緒不安定だった気がする。きっと、就活の事でストレスを感じているからか・・・

自分でも、ちょっとヤバイかなって思う。こんなんで就職とかできるのか?

「飯、食いに行こうぜ。」
そう言われ、ハツと気付けば授業は終わっていた。

「あ、、、うん。」気のない返事を真咲にすれば

「大丈夫か?医務室行っとくか?」と言われ、ううん、と首を振った。

立ち上がり、一歩踏み出したとき俺の意識が遠のく。


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