【曼珠沙華】 炎に落ちる097



 夏の日差しを浴びたアスファルトが、ふやけるほどに熱を発する頃。

夕方も6時を過ぎると、さらに人の出入りも多くなり、狭い店の中は客で溢れかえっていた。

自分で言うのもなんだけど、客が入り過ぎて一人でこなすにはちょっと厳しい。アルバイトを入れようかどうしようかと考えた事もあるが、今までそれをしなかったのは、桂のせいで・・・。

天野さんに対しての敵対心ほどではなくても、俺が自分以外の男と仲良くする事を良しとしなくて。
一時期は、同級生の長谷川まで牽制していたほど。

そんな桂も、長谷川の結婚を知ってからはやっと友達付き合いを認めてくれるようになった。元々、長谷川は昔から俺と桂の仲を気付いていたようなところもあって・・・。

高校で、完全に離れていた俺たちを修復させてくれたのは長谷川だった。

あの時、無理やり俺を桂に引き合わせたことが、今こうして形を変えて繋がっていると思うと感慨深くもある。
あの日が無ければ、俺たちはずっと互いを気に掛けたまますれ違っていただろう。


- この先、俺が桂の所へ会いに行くためにも、店を任せられる人材を見つけないとな・・・

ストックの棚も随分空が出来てきたし、そろそろ買い付けにも行きたい。

来週には、長谷川の結婚式もあるし、海外へ行くわけにはいかないけど、それが済んだら出掛けてみようか・・・。


8時になって、やっと店のシャッターを降ろす。

通い慣れた道のりを桂の家まで歩いて帰る俺。
結局アイツのいない間、俺は家の管理を任されて、自分の実家も近いのに、アイツの家でひとり暮らしをすることになった。

古い家屋は、人が住まないとどんどん朽ちてくるという。
家も呼吸をしているんだろうか。
人肌の温もりが恋しいのかな・・・。

そんな事を考えながら歩いて行くと、家の前でアネキが立っていた。


「おぅ、・・・久しぶり!」
軽く手をかざして言えば、ニコリと笑って俺を見る。

「お帰り。桂くん行ったんだってね。」

「そう、友田さんのチームに入ったって言ってたけど・・・?!」
ポケットからカギを出しながらアネキの顔を覗いた。

「うん、そうらしいね。・・・ご飯は?まだなら家で一緒に食べようと思ったんだけど。」

「ああ、・・・そうだな。久しぶりにオフクロの飯でも食うかな。」

俺は、玄関を開けると荷物だけを中に置き、またカギを閉めてアネキと実家に戻って行った。
ここのところ、ほとんどを桂と過ごしていて、もはやこっちが俺の居場所みたいになっていた。

実家に着くと、早速オフクロが桂の事を聞きたがった。

昔からこういう所は変わっていなくて、俺と桂がつるんでいるのを嬉しそうに見ていてくれる。
出来の悪い俺と違って、桂の事は出来のいい息子の様に思っているんだろうか。

「ちゃんと現地のご飯食べられるかしらねぇ。好き嫌いしなきゃいいけど・・・。」
そんな風にオフクロは心配するが、もう子供じゃないんだし。

「友田さんだって一緒なんだし、大丈夫だよ。アイツなんでも食えるから。」
俺は、好物のピーマンの肉詰めを箸で掴むと言った。

「あ~あ、なんで桂くん迄未開の地で橋を架けようなんて思うのかねぇ。男ってアドベンチャーワールドで生きてんのかしら。」
オフクロは、俺の顔を覗きながらそう言ったが、俺は決してそんな空間では生きていけない。

冒険は自分の性癖だけでこりごりだ。




ご覧いただき有難うございます
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント