【曼珠沙華】 炎に落ちる098


 「お前もなんだかおっさんになったなぁ。」

リビングで、テレビを観る俺にかけた父親の言葉。
久しぶりに顔を合わせてコレは、ちょっとムカつく。

「オヤジだって年取ったよなぁ。頭も白くなっちゃってさ。」
負けずに言ってやるが、本当に白いものが多く見受けられるようになって、年もそうだが苦労もあるのかと思い、ちょっと反省。
親父が気に掛けるとしたら、息子の俺の事だろう。

「ま、気苦労かけて申し訳ないと思ってるけど。」

「おぅ、そう思ってんだ?!お前も大人になったじゃないか。」

「はは、28でやっと大人か・・・。」
そういうと、親父の顔をもう一度見た。ニンマリと俺に微笑み返すと、またテーブルの上の酒に口を付ける。


「友田くんも長く行ってるなぁ。もう1年以上か?」
アネキの方に向き直ると、父親が言う。もう一つ心配事があるとすれば、アネキと友田さんと息子の謙の事。

もう1年以上離れて暮らす家族だが、昔は秘境の地でも一緒について行くのだと思っていた。
でも、謙が小学校に上がると、それはなかなか難しい話で。
生活以上に、学校の問題が大きくて、謙を遥か遠くの小学校まで通わせるのは忍びないと思ったんだろう。
アネキは、謙と共に日本に残り、友田さんは年に数えるほど帰国をすると、やっと家族が揃うという恰好になる。

「かなりの辺鄙な地域なんだろ?!桂も友田さんもホントに物好きだよな。」
物好きなんて言葉は申し訳ないけど、正直そう思った。

「友田さんは昔からそう言ってたし、私もそれを覚悟で結婚したんだからいいのよ。けど、桂くんはねぇ・・・。」

親父の向かいに座るアネキは、俺の方を見ると少し肩をあげる。
これこそ物好き以外の何物でもない。桂は俺との生活よりも自分の夢を選んだって事だ。
でも、俺だって覚悟はしていた事。それに、アネキじゃないけどそんな夢を持った桂に惚れたんだし。

俺の出来る事は、アイツが日本に戻ってきたときに安心してくつろげるようにあの家を守っていく事だった。
築数十年の古い家屋でも、アイツが中学から住み続けた家。それを俺が引き継いで手入れする。

「桂も友田さんに観かされたんだろうな。でも、いきたいと言い出したのはアイツだしさ、別にいいんじゃない?無事に仕事が終われば日本に戻ってくるんだし。そしたら少しは出世するだろうしな・・・」

「・・・そうね、出世してほしいわぁ・・・。謙を塾に通わせられるぐらいにはね。」

「出た。教育ママ発言。」
俺がアネキにふざけて言うと、「謙ってさ、誰に似たんだか全く勉強しないのよね。いつも自分の好きな事に夢中で。宿題なんかしている所見た事ないもん。」と、眉間にシワを寄せる。


- それって・・・俺かな?

内心思ったが、それを口に出すと俺に矛先が向きそうだから黙っていた。
俺も昔からそう。自分の好きな事、その時興味がある事に夢中になり過ぎる。
残念ながら、学問に興味は持てなかったら今に至っているわけだ。


ぼんやりとテレビ画面に視線をやりながらも、心は遥か遠い地の桂に向かっていた。

- アイツ、今頃仕事してるんだろうか・・・。
2年は長いよな・・・・・。

テレビの前に陣取りながら、植物図鑑に目をやる謙がちょっとだけ不憫になるが、謙も大人に囲まれて自分の立場を模索しているのか、アネキや親父たちにとっては心優しい男に育っていた。そんな謙を俺も可愛いと思うし、友田さんの代わりに力になれる事はしてやりたいと思う。





夜もとっぷりと更け、俺は親父たちに「またな。」というと桂の家に戻って行った。

ほんの数時間、実家に戻っていただけでも、やっぱりこの家に入ると心が落ち着く。
じいちゃんやばあちゃん達が離れてからは、この家が俺と桂の(愛の巣)だもんな。桂の姿は無くっても、ここにはアイツの気配がいっぱい残っている。使いかけの歯ブラシも、シャンプーだって桂専用のがそのまま風呂に置いてあった。


- 早く戻ってこい..................................。


心の中で呟くと、俺は一人ベッドに潜り込んだ。











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