境界線の果てには。(024)

ベッドの周りを取り囲むカーテンの仕切りに映る影で、自分がどうなったのかを知る広斗だった。

-また倒れたのかぁー・・・・チクショウ・・・

『何か症状を引き起こすようなことがあったのかしら?授業中なんて初めてでしょ。』
『わかりません。気づいたら具合悪そうにしていて・・・』

-真咲か・・・先生と話してるんだ?!・・・・

『青木くんの場合は、特定の状況でないと現れないかと思っていたんだけど、やっぱり専門のお医者さんに診てもらうべきかなぁ。中野君からも言ってあげたらどう?ダメかしら?』
『・・・・・・・オレの言う事なんか聞きますかね?』

-あーあ。何相談してんだよ!ったく・・・・!


「先生、有難うございました。」
カーテンを思い切り開くと、大きな声で校医に向かって言う。

広斗の顔を見た女医は少し驚きの表情をしたが、ニッコリ微笑むと「良かったわ、怪我が無くて。」とだけ言った。

それは、突然気を失ったらどこだろうと倒れてしまうし、打ち所が悪かったら死ぬかもしれない、という事が分かっていての発言だった。

「すいません、もう大丈夫ですから・・・・あと、病院にも行ってみますよ。」

「あら・・・そう?・・・そうね、早い方がいいかな?」
「はい。」

広斗が校医と話している間、真咲は様子を伺っていた。

-顔色は悪いし、こんな風に倒れるのは多分1年ぶり。オレがエレベーターの中で倒れてるのを運んだあとは、資料室かなんかで、教授に資料の整理を頼まれたのが、たまたま女の子と二人だった。

断れずに受けたから・・・・

あの時はまだオレもわかってなかったしな・・・・閉所恐怖症だとばかり思ってたし。


「真咲も、ありがとな。・・・大丈夫だから。」
「ああ、・・・ちょっと焦ったけど、あの場所で良かったよ。受け止められて・・・」

「うん・・・ありがと」
ちょっと照れくさそうに広斗が頭を掻いた。

二人は医務室を出ると、昼休みが終わる時間なのを確認する。

「ごめん、昼飯食い損ねただろ?」広斗が申し訳なさそうに言うので
「大丈夫、高木がサンドイッチ持ってきてくれた。・・・あ、おまえの分もあるから食うか?」

バッグの中をゴソゴソと探す真咲の手を取った広斗が、力を込めてその手を握りしめた。

真咲が見た広斗の目には涙がにじんでいて、声には出せない広斗の深い悲しみを感じてしまう。

「オレが・・・何か出来る事って・・・・」
そう言ったが、広斗は力なく首だけ横に振った。

*
*
賑わう商店街を一本入った路地には住宅が建ち並んでいるが、その中にコンクリート打ちっぱなしのちょっと変わった建物があった。

真咲が家まで送るというのを断った広斗は、その建物の前で立ち止まると、門に掲げられたプレートを確認する。


〔末永クリニック〕


-案外普通のネーミングにしたんだな、あのひと。

フっと薄笑いを浮かべた広斗は、入口のガラスドアを押して入って行った。

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