【曼珠沙華】 炎に落ちる106



 暗闇に、一瞬閃光が射したような気がして、目が覚める。

- - - 何?雷か..........?!

雨音は聞こえなくて、庭で虫の声がしているだけ。なんとなく胸の中がざわざわと粟立つ。皮膚に鳥肌が立つような感覚を内面に感じ、思わずベッドから起き上がった。

カーテンの隙間から外を眺めるが、取り立てて雨が降るような雲は見当たらない。月の光も満月に近く庭の木々に降り注いでいた。

- - - 嫌な感じだ............。

そんな風に思いながらも、ベッドに腰を置いたその時。枕元の携帯が鳴った。

「.......はい、どうした?!」
表示されたのはアネキの名前。
こんな時間に掛けてくることはなかったし、さっきの胸のざわつきが治まらないままで、気持ち悪かった。

「.......」

声を発しないまま、何をしているんだろう、と思った俺だったが、電話の向こうで呻くような声がしているのに気づく。

「アネキ?!......どうしたんだ、何かあったのか?謙が熱でも出したか?」

俺は思いつく事を聞いてみたが、まだ声は出て来ない。

「.....アネキって!!黙ってたらわかんないよ。何か言ってくれよ!!」
少しイラついてそんな事を言ってしまった。が、すぐに帰ってきた言葉。

「どうしよう........、行方不明だって.........、ねぇ、どうしたらいい?」

「......え?......誰の事を言ってるんだよ。まさか.......友田さん?」

さっきのざわつきは余計に酷くなって、俺の背中も電気が走ったみたいに震えてきた。
それに、あっちは今頃仕事をしている時間帯。そんな時間に行方不明って.........
「何言ってるんだよ。ちゃんと説明しろって!!分かんねぇよ。」
だんだん言葉もきつくなって、声も大きくなってしまったが、伝わってこない状況に俺自身がイラついた。

「.....ごめん、さっき友田の会社の上司から電話が来て......」
と、そこまで言ったアネキが突然涙声になると、「橋ごと流された、って.......、長雨で地盤が緩んで、丁度橋の点検をしている時に、友田、.....が、.........」
その先は、声にならない声で泣くばかり。
俺は何を言えばいいのか分からなくて.......。

「アネキ......、アネキ、しっかりしろ。今からそっちに行くから、.....」と、励まそうとしたとき。

「桂くんも、.......一緒、......に........」


「..........ぇ?」





しばらく頭の中が詰まったみたいな感覚になる。頭なのか、耳の中なのか........、とにかく俺の身体の中身が固まった様な気がした。


「なんて?.......桂も、友田さんと一緒に?」
やっとの事で口をついて出たが、その先を聞くのが恐ろしい。何処かで耳を塞ぎたい衝動にかられた。


「......そう、他にも、現地の社員とか、日本人の社員も、全部で10人以上,.........だって.........。」


「......................」


その場に崩れ落ちそうになるのを必死でこらえると、それでも俺はアネキの元へ駆けつけてやらなければ、と思った。
「とにかく、待ってろ。すぐ行くから.....。」

「うん、ありがと......。」



携帯電話と財布、それだけを持つとTシャツの上にパーカーを羽織りタクシーを呼ぶ。

明け方近くなっても、なかなか来ない車にイラつきながら、何処かでは必死に「冷静になるんだ」と言い聞かせていた。
俺が慌てて、変になったらどうする?本当に桂も一緒に流されたのか確認しなくちゃ。

タクシーに乗り込み、運転手にアネキの家を告げた俺は、シートに身体を預けて空を見る。


この空は、アイツのいる場所に繋がっているんじゃないのか.........?




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長い間、続きが書けないまま放置してしまいました。読んで頂いた通り、これからの展開は少し重くなります。
そんな事もあって、自分の気持ちがふさぎ込んでしまい、書けないまま今に至りました。
ムラゴンブログでの「カザミドリ」を読まれた方は、友田さん親子が母と謙の二人家族だという事をご存知かと思います。
その経緯については細かく書きませんでしたが、こうして千早と桂の事で繋がってくるのは辛いことです。そして、それを書かないと後々の千早の行動に移れなくて.......。
途中で止めた方が.......、なんて思ったりもしたのですが、ちゃんと前を向いてやり遂げようと思いました。
至らない部分も多いのですが、またお付き合いくださると嬉しいです。
宜しくお願い致します。m(__)m

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コメント

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Re: No title

> 明けない夜は無い。
 
 本当にその通りですね。
 どんなに土砂降りの雨が降ろうと、大雪に見舞われようと、必ず朝はやってきます。
 
 千早の進む道がどうなるのか、それは多分私が一番わかっている事で、なので苦しくもあるのですが。
 なんとか道しるべを作ってやりたいと思います。

 春も目の前、穏やかな日々も来るのでしょうね。
 ご訪問有難うございました。
 返信させていただきました。m(__)m