【曼珠沙華】 炎に落ちる121



 - - - 暗い川の底で、お前が最後に見たものは何だった?

意識が途切れる前に、少しでも俺の事を思いだしただろうか?
俺は、お前の事をこんなにも愛しているのに.............
どうして俺の前から姿を消したんだ?!

ずっと帰って来るのを待っているのに...........

手を伸ばしても、その先には何もない
冷えた指先が空しく震えるだけ.......

俺も川の底で眠りたい
..........流れ着く先にお前が居てくれるのなら.............





- - 「........サン、...........コ、ガネイ......さん。大丈夫ですか?」

「..................?」

「こんな所で、何を............?」

「...................」

耳に入る声に聴き覚えがある。

そっと重い瞼を開けてみると、深紅の花びらが目に入った。
見覚えのあるソレは、俺の身体を取り囲んでいるようで。
炎の様に散りばめられた真っ赤な彼岸花の下で、俺はなぜか横たわっていた。

「小金井さん、ここで何してるんです?こんな土手で寝ていたら不審者だと思われますよ?」
「........................?」

ゆっくり声のする方に顔を向けて見る。

「.............おーはら、くん?!」

目の前には、制服を着たおーはら君が横たわる俺を覗き込んでいて、目が合うと少し引きつって笑った。


「.........俺、.........どうしてここに.............。」
「...............さあ?!」

首を傾げて不思議そうな顔をしたおーはら君の差し出した手を摑むと、ゆっくり上体を起こす。

辺りを見ると、ここは俺が高校生の時に通学路にしていた川沿いの土手だった。

深紅のじゅうたんを敷き詰めたように彼岸花が咲き誇っているが、その中で、まるで炎に焼かれるように俺は横たわっていた..........。

川を求めて彷徨い歩いたのか、靴も履かずに裸足のまま。
足の裏が傷だらけだ.........。

「............おーはら君は?......どうしてここに?」
「僕、港南工業高校の3年ですから。ここは通学に使っている道ですよ。」

「あ、......そうか、......俺も港南.......だった、けど.........」

俺たちを遠巻きにしながら、高校生たちが土手を歩いて行く。
丁度登校時間の様で、みんなにジロジロと見られて、なんとも言えない気持ちになった。

「この花、.......毒があるんですよ?!ここに居るのは良くないと思うな。」
「え?.........あ、ぁ..........そうだった。」

昔、天野さんが言っていた。
彼岸花の毒の話。..............おーはら君が同じ事を言うなんて........。

「本当にあるのか、......確かめてみるかな........」
そう言うと、俺は手元の花を掴んで口に運ぼうとした。
「ばかなッ!!!やめてください!!」

バシッと手を叩かれて、持っていた彼岸花が地面に落ちる。

「冗談はやめてくださいよ。酔っぱらっているんですか?」
俺の腕を掴んで引っ張り上げると、服についたドロをはたいてくれるが、その目は呆れているようだった。

「.........本気、.......きみが見ていてくれるなら、ここで死んだっていい。」
俺は、その場に座り込む。身体の力が抜けて、バカな事を言っている自覚はあるけど、本心でもあった。
いっそ、このまま消えてなくなりたい。
桂がこの世に居ないのなら、俺がいる意味がない。


「............何があったか知りませんけど、僕の体育館シューズ、貸しますから。その先に出たらタクシー拾えるし、帰りましょう。」

おーはら君は、バックパックの中に手を入れると白い体育館シューズを取り出す。
そうして、それを俺に履かせてくれると、手を引いて通りまで連れて行ってくれた。

相変わらず周りからはジロジロ見られているが、おーはら君は全く気にしていない様で。
手を繋いで歩く姿は、好気の眼差しで見られていた。


通りで手を上げてタクシーを止めると、俺と一緒に車に乗り込んだ。
「.....おい、お前は、学校.............」と言いかけて、「三田駅の商店街の傍まで。」と、運転手に言うおーはら君を降ろせなくなった俺。

成り行きで、こんな事に巻き込んでしまったが、カレは車の中でもずっと俺と手を繋いだままだった。
それがすごく安心出来て、今はこの手に縋りたい気持ちになる。


タクシーの中では、言葉は発しないまま。
手の温もりと、時折力を込めてぎゅっと握られる事で、俺の冷えた心を温めてくれた。







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