境界線の果てには。(026)

横並びに座った末永は、広斗の頭に手を乗せると、まじまじと顔を見ながら
「大人になったなぁ。」と言った。

その表情は、懐かしむようでもあり、とても感慨深いものだった。

なんと返せばいいのか分からず、広斗はニヤニヤしてしまう。

「そっかぁ、3年も絶つんだもんね。もう成人してるんだねぇ。」そう言うとまた、元の席に戻って座る。

あの事故のあと、入院中の俺に異変が起きたのは外傷が治りかけた頃。

ある日、同じクラスの女子がお見舞いに来て、学校からのプリントやらノートのコピーを一人で持って来たんだ。

うちのオフクロが席を外して、その子と二人きりになった途端吐き気と目眩に襲われた。後の記憶は無い。

気が付けば、体にいろんな線がついていて、その後俺の担当が末永先生になった。

「夜はちゃんと眠れてる?」と聞かれ、ハイと答える。

「じゃあ、今日のところは帰っていいよ。」

「え?・・・薬とかは?」キョトンとした俺に

「眠れてるなら、それでいい。今のところはね。また来週おいで。それまでに広斗にとってのいい方法を探しておくから。」

〔広斗〕と呼ばれ、一瞬昔の光景が脳裏をよぎった。が、それはコンコン、というノックの音でかき消される。

「すみません、次の患者さんがお待ちですが。」
「はい。すぐ行きます。」

さっきの男性看護師が伝えに来ると、俺はそのまま帰された。

診察料はいいと言われ、「困ります」と言ったが、「来週からは頂くよ。」というのでなんだかすっきりしない。

それでも、俺を知っていてくれる先生に再び会えたことが、少しだけ安堵感を与えてくれた。





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