【曼珠沙華】 炎に落ちる130


 桂の告別式は、会社の人たちもたくさん列席してくれて、用意された式場には入りきれない程の人が集まった。

もちろん、桂の親父さんの関係者も多くて、俺は長谷川たち同級生と隅の方で肩を並べていた。


「なんだか呆気ないな。この間まで一緒に笑っていたってのに......。千早、大丈夫か?」

長谷川が俺の顔を覗くように聞いてくる。
チラッと目をやると、長谷川の方が不安げな顔をしていた。

「大丈夫、.......じゃない、かな。.....正直しんどいよ。」

「だよな、中学からいったん離れたけど、また再開してからは昔通りべったりだったもんな。」

「.....べったり、って.........。」

「オレ、別にお前らの事偏見の目で見てないから。気の合う奴が一緒に居るって自然な事だもんな。」

「.......え?.........長谷川.......?知って、た?俺と桂の関係.......」

「当たり前だ。.........オレの勘では、中学ん時には桂の方がお前に惚れてたと思うよ。」

「え?.......ウソ。」
「ホント、ほんと。だから、お前らが口きかなくなった時、てっきり桂が告ってフラれたのかと思ったんだ。」

「ㇸ、え~、そうなんだ?!でも、有難う。長谷川が俺と桂を再会させてくれたから一緒に居られた。」
「.........そう、だな........。ずっと、これからも.........の予定だったのにな.......残念だ。」

膝に置いた手をギュっと組むと、長谷川は肩を震わせた。

俺は、その姿を目に焼き付けながらも、自分の中ではまだ桂は生きている気がしてならなかった。

向こうの祭壇に飾られた遺影の写真を見ると、アイツが笑って俺を見ているようで。
確かに、箱に入れられたのは桂の遺骨だろうが、この手で触れられないアイツの身体が、そんな箱の中にあるとは思えなくて。

「小金井。.........」

俺の横で声を掛けてきたのは柴田だった。

「.....柴田、来てくれたんだ?!有難う。」

柴田は仕事の途中なのか、大きなカバンに書類を詰め込んだまま俺の横にしゃがみ込んだ。
じっと、座っている俺の顔を見ると、「その顔は、もう散々泣いたって顔だな。.........ちゃんと飯食ってるか?」と言って、そっと俺の肩を掴んだ。

「......ああ、もう普通にやってるよ。ちゃんと食ってるし、俺が泣いてても仕方ないもんな。」
柴田の顔を見る。少しだけホッとしたような表情になって、みんなに心配かけてるな、と思った。

「長谷川、久しぶりに会ったらこんな事で.........。ビックリしたよな。」
今度は長谷川の隣に行くと、床にカバンを置いて立つ。

しばらく柴田と長谷川の会話を聞きながら、俺はまた遺影の写真に目をやった。

祭壇の前には沢山の生花が飾られていて、なんだか変な感じがした。桂には、昔見舞いの花をやったが、その時のイメージが強くて今日の花はちょっと上品すぎるっていうか、アイツには元気なビタミンカラーが似合うのにって思った。
俺が飾るのは、ビタミンカラーにしてやるから..........。
そう心の中で言う。




- - - 
多くの人にお別れをしてもらい、桂の遺骨は墓のある神奈川県へと向かっていた。

身体の不自由なじいちゃんに代わって、俺が桂の親父さんと墓へ行く。
納骨されれば、桂の魂はあの世へと行ってしまい、現世でのしがらみも何もない、雲の上でのんびりとするんだろうか。
そんな事を考えながら、車の窓から遠くの景色を眺める。


親父さんと連れだって桂家の墓まで歩いて行くが、途中、あぜ道で咲く彼岸花に目が行った。
通学路の土手に群生していたこの花の中で、俺は眠っていたようで。おーはら君に起こされて.....。
少し心が痛む。自分の気持ちがおかしくなっていたのは事実だが、俺がした事が悔やまれる。桂にも合わせる顔がないっていうか。



横目で彼岸花を見ながら、墓に着くと住職が待っていてくれた。
その後もう一度お経を読むと、桂の遺骨はしっかりと収められる。そうして、キッチリと蓋をされると、なんだか住む世界を線引きされた様な気がした。俺の住む現世と、桂の住むあの世。何処かに繋がるドアがあったらいいのに........。なんて、バカな事を考えたりする。


帰りの車の中で、親父さんが俺に言った。
「あの家は、今年中に処分する事になりました。.........父たちの費用に充てるつもりです。」
凄く悪い事を言っているかの様に、申し訳なさそうに話す。


「分かりました。.....あそこは桂の、秀治の家なんで、アイツが居ない今、俺が住み続けるのはおかしいですもんね。」
俺が吹っ切れたように言う。

「申し訳ない。思い出のある家なのに........。」

「いいんですよ、桂さんの家なんですから.......、ホントに.......、いいんです。」
言ってはみたけど、心が痛かった。チクチクと、針でつつかれた様な痛みが身体の中からしてくる。
でも、これは仕方のない事。自分にそう言い聞かせると、また遠くの景色に目をやった。



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