【曼珠沙華】 炎に落ちる135



 - 目の前を走る一台のオープンカー。

何故だか俺は南国の島にいて、ハイウェイを走る車の中に居た。もちろん俺が運転しているんだけど、ハンドルを切ろうとしてハンドルがない事に気づく。

『あっ、ヤバイ。このままじゃ絶対ぶつかる!!曲がれないじゃん。どうすんだよッ!!!!!!』

と、叫んだとき、目の前のオープンカーを運転している男が俺の方を振り返る。

『!!か、つらッ!!!!!』
その顔は桂だった。

桂は俺が運転するのを嫌っていて、危ないからダメだとハンドルを握らせてくれなかった。

-----このまま何処かにぶつかってしまえって事か?!俺がお前の所へ行くのを待ってるのか?!


「か、つらぁ---------ッ」






「小金井さん。...........どうしました?」

「----------ぇ?」


目の前に居たのは、おーはら君で。

「叫び声が聞こえて..........、怖い夢でも見たんですか?」

「--------ん、まぁ、な。」

呼吸を整えて自分の胸をさすったが、心臓がハンパなくドクドクと脈打っていた。
桂が、俺の死を望むはずないのに.............。変な夢だ。

「僕、ここで寝ます。小金井さんの横で」

そういうと、布団をめくって隣に入ってきた。

「お、オイ.......、ちょっと、何してんだ。」

焦る俺に、「この間、償いはするって言いましたよね。」と言われ、確かに送って行った時に話した気はする。
訴えたければ、俺を訴えてもいいって言って。

「.....償いは、するけど.......」

「じゃあ、ここで眠らせて下さい。僕、淋しいんです。ひとりで寝るのは嫌いだ........寂しくて死にたくなる。」

「........おーはら..........」

それ以上は何も言えなくなった。


俺だって、ひとりで寝るのは寂しいさ。桂の体温も忘れてしまう程、もう長い間一緒に寝ていないんだから。

「おやすみなさい。」


一言だけ言うと、おーはら君は俺にしがみ付いてきたが、そのままスースーと寝息を立ててしまった。


頬に当たるフワフワの髪の毛。

くすぐったくて指で避ければ、そのままおーはら君のおでこに頬を当てる。

この間の、うっすらと記憶に残った白い肌が、俺の瞼に浮かんできたが、今はゆっくり体温だけを感じて眠りたかった。



- かつら、.........ごめんな..........




- - - 
翌朝、俺が起きるとベッドにおーはら君の姿は無かったが、下からは美味そうなみそ汁の香りがしてきて、思わず気持ちが温かくなった。実家のオフクロが作ってくれたみそ汁が最後だったもんな。

階下へ降りて行けば、「おはようございます」と、おーはら君がにこやかに微笑む。

「おはよう.........ちゃんと起きられるんだな」

「.....当たり前です。これから学校行ってくるんで、また終わったらここへ戻ってきていいですか?」
お椀にみそ汁を注ぐと言ったが、断わる気持ちも萎えるほど、哀願の眼差しで見られてしまう。

「.......いいけど、心配かけるかもしれないから、一応おじさんに話しておけよ。」
「はい、そうします。」

急にテンションが上がった声になると、テーブルに並べたご飯茶碗を俺に渡してくれた。


「じゃあ、僕は行ってきます。食べ終わったら流しに浸けておいてください。帰ってきたら洗いますから。」

「.......ああ、行ってら。.........あ、カギは.........」
そういうと、棚に置いた自分のキーケースから、一つ外しておーはら君に放り投げた。

「ありがとうございます。」
「うん、........気を付けて行け。」

振り向きざまにニコッと笑い顔を見せると、おーはら君はデイパックを持たずに、スクールバッグを肩に下げて出かけて行った。


- なんだよ、スクールバッグ持ってるのかよ...............。

玄関のドアが閉まる前に「行ってきま~すッ」という声が聞こえて、急に家の中が明るくなった気がした。





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