【曼珠沙華】 炎に落ちる149


 結局、ゲイバーではタバコをふかしただけで。

はじめママの性格は大好きだ。あのゴツイ身体に聖母の様な包容力を持っていて、ガキだった俺は随分と助けられた。
それに、大人になってからも天野さん同様俺を可愛がってくれて、今度の新店舗の話だって色々相談に乗ってもらっている。

でも、おーはらの事に関しては、俺がすべて悪いみたいに言われて悔しかった。

俺は、慈善家のような気持でアイツを拾ったわけじゃないが、あの頃の自分の心境が自分自身でもよく分からないんだ。
ただ、おーはらと桂を重ね合わせていたような気もするし.........
それに、あの日、高校生だったおーはらを犯してしまった事に対する負い目もあった。
親に捨てられたアイツをこの手で掴んでいてやりたかったし、俺もあの日、おーはらにこの身体を掴まれていた気がする。

アイツに出会っていなかったら、俺はこの身を桂の元へ送っていたかもしれなかった。
あの世で出会える保証もないのに....................。


街灯に照らされて、舗道に伸びる自分の影に付きまとわれながら、誰も待つことのない家へと帰る。

玄関を開けても「おかえりなさい」の一言もない。


いつからか、この家に新しい温もりを感じ始めて、今また失う虚しさを味わう。






- - - 

翌日不動産屋へ行くと、前に紹介された物件がすぐにでも入居できると聞いて、俺は即決した。
桂の父親の好意でこの家を借りていたが、ついにここを去る日がやって来るとは............

桂と過ごした日々が、走馬灯のように俺の頭を駆け巡る。
が、それに便乗するように、短期間のおーはらの存在も消すことは出来ない。


吉田くんに無理を言って、次の休みは俺の引っ越しにまで付き合わせてしまった。

部屋は、店からも歩いて行ける距離で、8階建ての新築マンション。
家具なんかは無くて、ただ一つダブルベッドが部屋のど真ん中に置かれていると、まるでラブホテルにでも来たような気持になる。
と、言ったのは吉田くんで。
俺は、ラブホテルなんか行ったことが無い。旅行で行くのも普通のビジネスホテルか旅館。
男同士でもラブホなんかに入れるのか知らないし.........。

兎に角、台所用品は桂の家で使っていたものを持ってくる。
それから服とか身の回りの物は、少しづつ車に積んで運ぶつもりだった。

「この部屋、20畳ぐらいあるんじゃないっすか?!すごいっすね。流石です。」

吉田くんは、店から持ってきたウッドスツールに腰掛けると膝を組んだ。

木のフォルムと鉄の組み合わせがちょっとカッコよくて、すぐに気に入ると自分用に購入したスツール。
一応おーはらの分も用意しておいたんだけどな.......。

「ひとりでダブルベッドって夢っすよ。でも、ちょっと寒い気もするなぁ。・・・・・」

そう言うと笑って俺を見るが、吉田くんは俺がおーはらとここに暮らすつもりだった事は知らない。
もちろん、自分がゲイだってのは言ってある。そういうのに嫌悪感もたれたら一緒に働けないもんな。
多分、はじめママとかも顔を出すだろうし、そういう繋がりの奴も来るから。ソコは隠さないでいたかった。

「なあ、吉田くんって、付き合ってる人いる?」

「え?・・・・・いないっすよ。でも、気になるヤツはいるんですけどね、多分無理だし。」
いつになく弱気な発言の吉田くんが気になるが、俺は買ってきたコーヒー缶を渡すと自分も開けて一口飲む。

「変な話、身体の繋がりより、心の繋がりを切るのって辛いもんだな。」
俺が缶をテーブルに置いて言うと、吉田くんがキョトンとした顔でこちらを見る。

「自分が店に入る前、ずっと閉店状態だったのって、なんかあったんすね?!・・・ま、聞きませんけど。」

吉田くんはそう言うと、立ち上がって床に置いた荷物を隅に寄せた。


「・・・・・ありがと。」

それだけ言って、俺も玄関のものを片付ける。


ひとりでこの部屋を決めてしまったけど、仕方ないよな。
おーはらが俺の元を離れた以上は、どうにもしようがないし。はじめママに放り出されでもしない限りは・・・・・

部屋の真ん中のダブルベッドに目をやると、(さすがにキングサイズは買えねぇよな)と、一人呟いた。




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