【曼珠沙華】 炎に落ちる154


 その晩、ママの店から帰る途中で、いつもは通らない脇道に足が向いていた。
そこは、前におーはらが’うり’をしていた路地で、たまたま目撃した俺は思いあまっておーはらを家に連れて行った。
思えば、あの日から俺たちの変わった生活が始まったが、先に見限ったのはおーはらだった。なのに、どうしてまた、ここにいるかもしれないなんて思ったんだろう。

ママのマンションに身を寄せているんだ。こんな所にいるはずが......

と、思った俺の目の前に、何故かハデな連中に取り囲まれたおーはらの姿があった。
路地の真ん中辺りで、膝を着くおーはらの髪に手を伸ばしているのは、何処かで見たような男。
暗くて良くは見えないけど、時折街灯から洩れた照明が男の顔に当たると、キラキラとしたものが光った。
それがピアスだと分かると、すぐに思い出す。

昔、俺にしつこく「オカマ」と言って難癖つけてきた男。
最近見かけないと思っていたのに......。

おーはらは、その男に膝まづくと他の男が見ている前でそいつの股間に顔を寄せていた。

ッ、...................

俺でなくても見ればわかる。
一瞬目を逸らそうかと思った。
.........キタナイ............

そんな風に感じていた俺が立ちすくんでいると、その男は俺に気づいたようで。

「......あ、.......お前........」と言って自分の前に居るおーはらを蹴飛ばす。

「.....イ、......ッタイ.....」

蹴られて尻もちをついたおーはらは、後ろを振り返ると俺と目が合い驚きの表情になる。

「.....................」

言葉は出なかったが、代わりにピアス男が俺に近寄って来た。連れの男たちもポケットの中に手を入れてこちらに来る。

「よお、久しぶりだな。........しばらく見ない間に羽振りが良さそうじゃん、オカマのくせにサ。」
そう吐き捨てると、俺の顔を見てニヤニヤと笑った。

「....................」
俺が黙っていると、「ヒゲなんか生やしたってオカマ臭さは抜けねぇな!お前もこっちに来て混ざんなよ。」といって笑った。

「....................」
...................くだらねぇ............................。

まだこんな事しているのかと、呆れてモノも言えないが、やっぱり腹が立つ。

「お前ら、未成年になんて事してんだよ。そいつの事知ってんのか?」と聞いた。
もちろん、おーはらは下を向いたまま俺の顔は見れないようで。

「知るかよッ!!’うり’ボーイだろ?!未成年だろうとコイツが金くれって言うんだから、それなりのコトしてもらわないとな。」

男は顎をしゃくり上げて意気揚々と言った。

俺は、グッと拳を握り締める。
しかし、ここでカッとなって喧嘩沙汰になったところで、何にもならない。

「言っとくが、こいつは俺の持ちモンなんだ。汚されて黙ってられないだろ。返してもらうからな.......」
そう言うと、地面に伏せるおーはらに向かって
「立てよッ!!どこをほっつき歩いてるかと思えば。」
と大きな声で怒鳴った。

「おいおい、まだ終わってないから。これからヤサに連れ込んで楽しもうと思ってんのに......ふざけんなよ?!」
ピアス男は、尚も鋭い眼光を俺に向ける。が、その反面でビビッているのが見てとれた。
口元がピクリと動くと目を伏せ始める。

俺の知らない所で、昔コイツに何かがあった。
はじめママが手を回してくれて、こいつは俺に関われなくなったんだ。それ依頼、道で会っても見ぬふりをしていたのに.....。

「おい、これ以上こじらせたいのか?何なら、サシで勝負する?いい大人がみっとも無いけどさぁ。」
俺は男に近付いて、じっと目を見てやった。逸らさずに穴が空くほど見つめてやる。


「.............バカな、ガキじゃあるまいし。こんな子供を取り合ったって、何の得もねぇよ。帰るッ」

そう言うと、踵を返して他の連中と歩いて行ってしまう。


路地の角を曲がって、そいつらの姿が見えなくなるまで、俺はじっと構えたまま睨みつけていた。が、姿が消えた途端、力が抜ける。だらりと肩を落とすと、横を向いておーはらの背中を見た。

微かに震えるおーはらが、ひどく惨めに見えて俺の方が泣きそうになる。

「はじめママの所へ帰れよ。.........今夜の事は言わないでおいてやる。さっさと帰れ。」

精一杯の口調で言った。強く言わないと、また昔の様に手を引いてしまいそうで、俺の方が苦しくなる。





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