【曼珠沙華】 炎に落ちる160


 こじんまりしたバーのドアを開けて、いつもの野太い声で「いらっしゃ~い」と言われると、やっぱり落ち着く。
「今日はどうも、・・・やっぱりこっちのスタイルの方が、はじめママって感じするよな。」
いつもの席が空いていて、そこに腰掛けると言ったが、ママはノースリーブのワンピースに身を包み、分厚い睫毛もいつも通り。

「あらぁ、こっちの方が綺麗って事かしら?嬉しいわぁ。」

「・・・まあ、そうっすね。キレイって事でしょう・・・。」
ちょっと無理やりな感はあるが、本人がそう思っているんだから良しとしよう。

「今夜は客じゃなくて・・・、コレうちの母親が送ってきて。どうぞ食べて下さい。」
袋から明太子の包みを取り出すとママの目の前に置く。

「あっらぁ~・・・嬉しい!!コレあるとお酒が進むのよねぇ・・・!」
両手で包みを鷲づかみにすると、若い娘の様に飛び跳ねた。本当に好きなんだな~。


「じゃ、今夜はこれで。」という俺に「え~、帰っちゃうの?」と残念がるが、「まあ、今日はお疲れだもんね。イイワ、早く帰ってお休み。」と言ってニッコリ笑った。
俺もニコリと微笑んでドアを開けると店を後にする。

帰り道、あの路地裏を通る事はしなかった。歓楽街で賑わう客引きや酔っ払いの間をぶつからない様に避けて歩く。

あれから、おーはらの顔は見ていない。天野さんが店に来てくれた時にアイツの成長ぶりを話してくれて、俺は感心しながら聞くばかり。それで気持ちも楽になっていた。

ひとりきりの部屋に戻ると、シャワーを浴びてビールを片手に明太子をつまんだ。ママが言った通り、酒が進みそうで、ヤバイと思いながら残りをタッパーにしまう。

- あ~・・・疲れたけど、今日のは気分のいい疲れだ。

新しい店が無事にオープン出来た事。お客さんに喜んでもらえた事。そんな達成感と一緒に、身体の底から湧き上がる幸福感。・・・・・なのに、心の片隅で拭いきれないシミの様な淀んだものが顔を出した。

- 俺がこんなに頑張っても、傍で一緒に喜んでくれる桂がいない。「さすが千早だな。」って、俺の頭を撫でてくれよ。
そんな風にしてくれたのは何時だったっけ。


残ったビールを飲みほすと、一人でいるのが寂しくなった。
こんな事は珍しいが、俺はまた着替えると、ママの店とは反対の方向にあるゲイバーへと向かう。

おーはらに、俺の身体を貸してやっていた頃は、適度に性欲も抜けていたのに・・・・・
しばらくぶりに、身体だけの繋がりが欲しくなった俺は、その店に居た20代前半の男の子といい感じになる。俺よりも少し背の低い可愛い感じの男の子。

「小金井さんって言うんだ?!そのヒゲカッコイイね。」
甘い目を向けられて、ちょっといい気になった。

「君も、スミトって可愛い名前じゃん。その髪はくせ毛?」
彼の髪に触れて聞いてやると、フフフッと笑いながら「くすぐったいしぃ~、そうなの、生まれた時からこんななの。」と言った。

喋り方は、もろにウケって感じの子で。
「俺、ゆっくり出来ないんだよね、明日仕事だから・・・。」というと、「え~っ、そんなぁ~・・・・せっかくお知り合いになったのにぃ。」と言って上目遣いに俺を見た。

「・・・なら、朝まで一緒に居る?」と聞いてやる。

一瞬ためらったが、スミトは口角をあげると「うん、いいけど!」と微笑む。


バーを出て、俺がスミトの部屋に案内されると、すぐに絡みつくようなキスをされた。

リキュールの甘い香りがすると、無性に抱きしめたくなる。スミトの事は知らなくても、今この時だけは俺の身体を解放したかった。
吸い付くように、スミトの唇を何度か食むと上半身裸になった。キスをしながらスミトの服を脱がせると、俺はベッドに押し倒す。

....ぁ........

俺の手がスミトの胸を這うと、少し身体をよじりながら小さな吐息を漏らした。

その声で、俺のモノも反応をすると、その先はもう慣れたもので・・・。





男の身体は、出したらそれでスッキリ。
汗が額や背中を伝うが、それすら気持ちが良かった。まるでスポーツの様な気もする。

「シャワー借りるね。」そう言うと、俺はさっさとベッドから出た。
スミトはうつ伏せのままぐったりして声も出ない。

- ちょっとしつこ過ぎたか・・・?

汗を流して服を着た俺は、ベッドで横たわるスミトの横へ行くと「じゃあ、帰るね。」という。

「えっ?・・・朝まで一緒なんじゃないの?」
驚いて俺の顔を見上げたスミト。

「ごめんな、ホントに朝早いから、起こしたら申し訳ないもん。スミトはゆっくり寝てな。」
そう言って背中に口づけをしてやると、「もぅ~・・・」といって残念がる。
そのはにかんだ顔が可愛くて、俺は「また遊んで。」と言い残して部屋を出た。


辺りはシンと静まり返った住宅街。
その中をぼんやりと歩く俺は、どんなに身体を解放したって、心のシミは消せない事を知っていた。

なのに、また同じことを繰り返すんだ.............。



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