【曼珠沙華】 炎に落ちる163


 - ピンポーン・・・

その音で、おーはらが来たことが分かると、俺は静かにドアを開ける。

「おう、いらっしゃい。入って・・・」
身体を少し捻ってドアとの隙間を作ってやると、おーはらを中へ招き入れた。

「こんばんは。すみません・・・」
やけに小さくなって屈みながら部屋へとあがって行く。

「なんだよ、久々にあったってのに・・・元気ないじゃん。」

「・・・はい、すみません。」

「すみませんって、謝ってばっかだな?!何かやらかしたのか?」
俺が天野さんにカットをしてもらいに行ったことを話すと、自分が追い出された事がバレていると分かり、おーはらは観念したように眉を下げる。その顔が子供の様で笑ってしまった。

「まさか、はじめママの部屋でうりをしていたわけじゃないだろうな。そんな事したら俺だって放り出す。」
俺が少し険しい顔で言ったから、おーはらは泣きそうな顔になる。

「そんな事してません!僕、もう’うり’はしていませんから。小金井さんに助けてもらったのが最後ですよ。ママは勘違いしているんです。」

「・・・勘違い?・・・まあ、うりを辞めたのは良かったけど・・・。じゃあ、なんで?」
ママがおーはらを追い出すなんて余程の事だろう。俺には、昔厳しいことを言ったくせに・・・
慈善活動だとかナントカ言われたんだよな。

「まあ、後でゆっくり聞いてやる。とりあえず寿司食えよ。」
「あ、・・・はい。」

テーブルに乗せられた寿司の桶を見ると、一気におーはらの顔が緩んだ。心底食べたいと思っていたんだろう、早速舌でぺろりと唇を舐める。

「あ、僕お茶入れます。暖かいのありますよね?」
「ああ、そこのレンジの上の棚に・・・・」
そう言って、指をさすとすぐにキッチンへ行く。レンジの上のホコリがそのままだったことを思い出して、見られるのが恥ずかしかった。

「・・・忙しいんですね。小金井さん、お店何件やるつもりですか?」
そう聞かれ、掃除をする暇もないと思われたんだな、と思った。

「そこそこ忙しいけど、まあ、掃除が出来ない程じゃないんだ。コレは、ただの無精。」
レンジの上をキッチンペーパーで擦ると言った。
茶葉の入った容器をおーはらに渡すと、ポットに水を入れてコンロにかけた。
その間、冷蔵庫に寄り掛かって立つと、お湯が沸くサマをじっと見ていた。


お茶を入れて早速寿司に手を付ける。俺が一気にまぐろを口に放り込むと、おーはらは甘エビを頬張った。

「う、美味し~ぃ、久しぶりの寿司~ぃ、嬉しいな。」
美味そうな顔で笑って言う。その顔は悩みなんかなさそうなんだけど・・・



「・・・男を連れ込んで叱られたのか?ママってそんなキャラだっけ?」

満足した俺は、腹をさすりながらおーはらに聞いてみる。空腹が満たされると、やっと人の話を聞く気になる。

「男、・・・・ってのは違って・・・、小金井さん、スミトってやつと知り合いですよね?!」

「え?・・・・・スミト?」
一瞬誰の事かと思ったら・・・、前に遊んでエッチした子だ。確かスミトって可愛い名前だった。

「う、ん。知ってるけど・・・おーはらの知り合い?まさかな・・・」
とはいっても、この界隈でゲイの集まるところは限られている。はじめママに気を使って別の店でナンパしたけど、筒抜けなのかもしれないと思った。

「小金井さんはウソつきだよ。僕にはあんな事を言っておきながら、ちゃっかりスミトとヤっちゃってるんだもん。なんで僕はダメでスミトはいいんだ!!」
急に、おーはらが怒り出す。

「は?あんな事って、・・・何か言ったかな?」

「僕には身体を貸すだけって、・・・・・なのに、スミトの事はちゃんと抱いたんだ・・・」

「ぁ、・・・・・・」
ちょっとバツが悪かった。ママにも「何様のつもり?!」って叱られた事を思い出す。

「僕が追い出されたのは、元はと言えば小金井さんのせいなんですからね!責任とってほしい。」
「え?」

おーはらが、俺の座るソファーに雪崩込んでくるとしがみ付く。掴まれた腕は、結構痛い。こんなに力があったんだな・・・



でも、全くなんの事か分からない俺は、そこから動けずにいた。


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お待たせしました。
昨夜は疲れて眠ってしまい、アップできずにいましたが、
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【カザミドリ】〔風見鶏〕僕を見ないで18

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