【桔梗】の咲く家 

***こちらは別ブログで掲載しましたオリジナルBL小説です
    訳あってこちらにお引越しです(一部改正しております)
    が、pixiv小説へ置いてありますので、続きはそちらへお願いいたします。



【桔梗】の咲く家 01

 昨夜からの雨はあがり、古い日本家屋の庭先で、むせかえるような草木の匂いを嗅ぎながらぼんやり辺りを見廻す。

庭の一角では、土塀に寄り添う様に咲く 桔梗の花。薄紫のしとやかな姿は、この純和風の庭を引き立てている。しかし、そこ以外は手入れが出来ないのか、雑草が生い茂り、高級そうな庭石を覆い 隠していた。


「おはようございます。お迎えに参りました。」

カラカラツと引き戸を開けて、玄関口から声を掛ける。到着時間を知らせておいたから、鍵を開けていてくれたようだった。
踏みしめた敷石の固さは、あの日と同じように来る者を足止めする。


「あ、ご苦労様です。」

雨戸の閉められた薄暗い廊下の向こうで、若い声が響く。

- あ、、、

目を見張るオレの顔に気付き、その若者もしばらくオレを見ていた。


「……どうも、」と言って頭を下げると、彼は一瞬うつむき、又すぐに顔を上げる。


「ストレッチャー、そちらの縁側につけましたから、準備のほう宜しければ、搬送させて頂きます。」

同僚の長野さんが言えば、「はい、結構です。宜しくお願いします。」と言って、オレたちを促す様に、奥の部屋へと案内した。

障子戸を開けて目に飛び込んできたのは、介護ベッドに横たわる一人の男性。

あの日の面影はなく、骨と皮だけの白髪の男性は、オレ達に顔を向けると、コクリと首だけを動かした。


二人係りで男性をストレッチャーに乗せ、道路に停めた搬送車両に乗せる。

この車は、民間の救急車。
国土交通省の認可を受け、民間患者等の搬送車両として使われている。
あくまでも、民間救急サービスを提供する事業であって、緊急車両ではない。

それでも、オレ達乗務員は消防庁発行の乗務員適認証を所持していて、それなりの訓練や資格を持っていた。

乗り込んだ車両の中で、仰向けに寝る男性が辛くないよう、膝の下に枕を差し込んであげるとオレの顔を見て微笑んだが、その目尻のしわは、5年の歳月を物語っていた。

9月といっても外は暑く、少しだけ外気に触れただけでも男性の生気は吸いとられるようで、このままあと2時間、向かう先の病院にたどり着けるか心配になる。

オレの名は、内田 智也(トモヤ)
この仕事に就いて5年目で、今年29歳になった。

男性の横で、心配そうに手を繋いでいるのは、藤谷 美久(ヨシヒサ)くん。
オレと9歳離れているといってたから、今年20歳になったのか……。

オレたちが初めて出会ったのは、5年前のちょうど今頃。

あの時も、庭の一角で桔梗の花が群生していたのを覚えている。


……あれから5年も経ってしまったんだな………





↓ 続き
【桔梗】の咲く家 01


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