【桔梗】の咲く家

***先日の、ピクシブ掲載からの続きとなります

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【桔梗】の咲く家 01

 【桔梗】の咲く家 02


 隆哉さんとの約束通り、明子さんの家で待つヨシヒサくんを迎えに行く車の中だが、長野さんが運転しながらニヤニヤしているから気味が悪くて。

「なんですか?キモイですよ、一人で運転しながらニヤついて。」
オレは助手席で言ったが、長野さんはまっすぐ前を見ながら
「内田くん、凄いお願いされちゃって大丈夫?あの子、なんだかな~・・・」
言いかけて止めるから、余計に気味悪くなるが、長野さんのいう事も分かるような気がする。

あの場では断れなかったのが事実だけど、オレと藤谷家とは縁もゆかりもない。
オレに、ヨシヒサくんを気にかけてやってほしいと言われても、何の接点も無いんだ。
どうしろっていうんだろう・・・・?


白いおうちに着いたのは昼頃だったが、このまま元の場所へと帰るつもりだった。
それを知ってか、明子さんが途中で食べて下さいと言ってお弁当を持たせてくれた。

「本当にありがとうございました。兄に残された時間は少ないですが、きっと家族といい思い出を作れると思います。」
明子さんはそう言った。隆哉さんは、奥さんや子供と、どのぐらいの期間離れ離れに過ごしてきたんだろうか。
ずっとヨシヒサくんに付きっきりだったんだろうか・・・・

「ミク、・・・元気でね!いつでもここへ来ていいから。ちゃんとご飯食べるのよ?!」

「うん、明子さんもお元気で。僕は大丈夫だから、心配しないでください。」

二人のやり取りを聞きながら、さっきの姿が思い出されて、落ち着いてくれてよかったと思った。沈んだ気持ちのままじゃ、オレたちも帰りの車の中で、なんと声を掛けようか悩むところだ。無言の車中程気まずい事は無いからな・・・

「では、失礼します。ありがとうございました。」
「さようなら。ミクの事お願いしますね!」

明子さんにまで念押しされた気がするが、家に辿りつくまで、という意味だろうと思った。ヨシヒサくんは、明子さんに手を振ると車に乗り込み、オレはその横の椅子に座ると、窓から顔を出し会釈をする。

これから2時間かけて、来た道を戻る。
きっと疲れた事だろうと、ストレッチャーの上を片付けながら
「良かったらここに寝転んでもいいよ。着いたら、ちゃんと起こしてあげるから。」
と、ヨシヒサくんの顔を見て言った。

「え、マジでいいの?俺本気で寝ちゃうよ?!」
そう言ったヨシヒサくんの顔つきが、さっきまでとは違っているようで、不思議に思った。まるで別人のような言葉使いだし。
「ぼく」から「おれ」になっている・・・

「いいよ、寝てて。」
上の毛布を取ってあげると、寝転ぶ彼の身体にそっと掛ける。
それから、明子さんのお弁当を開けると、おにぎりを取り出して長野さんに渡した。

長野さんは運転しながらおにぎりを頬張り、まだニヤニヤしている。
「長野さん、大丈夫ですか?ニヤついてると、ご飯が変なとこに入りますよ!」
オレが言うが、気にするようでもなく、バクバクと食べていた。

オレも、おにぎりを手に取ると、口へと運ぶ。

手作りのおにぎりなんて何年ぶりに食べるんだろう・・・
自炊しているけど、自分でおにぎりを握るなんてしないもんな、と思いつつ、目の前で眠るヨシヒサくんに目をやった。

朝の甲斐甲斐しい姿は消え、今は普通の大学生のようで、こっちが素のカレなんだろうと思う。伯父さんと接する時は、完全に小さな子供の様だったし、それだけ慕っていたって事だろう。

羨ましいな・・・

オレが15歳の時に、あんな伯父さんがいてくれたら・・・・
おにぎりを頬張りながら窓の外を眺めると、抜けるような青空が広がっていた。




 目の前に広がった青空の向こうに意識が飛ぶと、オレは昔の事を思い出す。

15歳だったオレは、あの時のヨシヒサくんと同じ様に、不安に押し潰されそうな日々を送っていた。

中2の時、オフクロを癌で亡くし、父と二人きりになった。

その次の年、友人の会社の保証人になっていた父は、その会社の倒産と共に借金を背負わされてしまう。

到底普通のサラリーマンに返せる金額ではなく…。
家屋敷を売ったり、仕事を掛け持ちでこなしたりしたが、そんな事が続くはずもない。
かえって父の生真面目な性格は仇となった。

オレが15の年、学校から帰って目にしたのは……、首をくくってぶら下がる、父の姿。


父のあの姿を 今でも覚えている。




*****続きはこちらに↓
【桔梗】の咲く家02

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