【桔梗】の咲く家 03

この前の話↓
【桔梗】の咲く家 02



 眠い目を擦りながら会社に着くと、まだ営業時間前だというのに高木さんが電話を受けていた。
この仕事は、ほとんどが事前予約という形で受けるから、あまり急な依頼はない筈。

長野さんが、向かいの高木さんの様子を見ながら、オレに目配せをしてくる。
何かと思って近寄って行くと、
「大変だよ。内田くんにご指名入っちゃったみたい。」

「は?・・・ご指名って・・・?!」
タクシーでもないのに、指名制度は無いよな。人数合わせしかしない筈。

「何言ってんですか?オレ、ホストじゃないですよ。」
と、少しだけふざければ、いつものノリのいい長野さんが複雑な顔をする。
一体どこからだろうと気になって、高木さんの手元のメモ用紙を覗くと、《ふじたに》と書かれていた。

オレの心臓がキュツと掴まれた気がした。
まさか、またあそこへ行くのか?一体誰が、他に住人はいなかったはずだけど・・・

「はい、分かりました。では夕方4時ごろ伺います。・・・はい。・・はい。失礼致します。」と言うと、高木さんは受話器を置いた。

オレと長野さんが見守るなか、こちらを振り返るとオレの顔を見る。

「・・・な、何なんですか?急な仕事ですか。藤谷さんて、この間の?」高木さんを見つめると、一瞬眉を寄せる。それからすぐにこう言った。

「この会社も指名制度を入れるべきだね。リピート客を掴むにはそれしかないよ。」と。

全く意味が分からない。
「で、藤谷さんをどちらまでお連れするんです?まさかタクシーがわりじゃないでしょうね!」
たまにタクシーの様に使おうとして、料金聞いて目が飛び出るほど驚く人がいるから。

「息子さん、腕の骨を折っているらしくて、病院へ連れて行ってほしいって。なんか3日前に折ったらしいんだけど、一人でバスを乗り継いで行くのは大変で、連れて行って家に帰るまでお願いするってさ。」
高木さんが言うから
「なんでオレなんですか?誰でもいいじゃないですか、長野さんも今日の出動はないでしょう?」と聞く。

「だって、あのデッカイ人に。って言うんだもの・・・内田くんより大きな人っていないでしょ?よろしくね!」
そう言い放つと、予定表に書き込む。担当(内田)と書かれて、複雑な気持ちになった。

普通のタクシーを呼んで行った方がどれだけ安上がりか。
終わったら又タクシーを呼べばいいんだから・・・

料金を聞いても断らなかったって事は、案外お金に不自由はしていないんだな、と思った。大学へ通って、あの大きな家に一人で住み、お金の心配もしなくていいなんて、なんという贅沢な・・・
そこでまたオレは、自分の生い立ちを思い知らされる。全く・・・気が重いな。



時間まで、雑務と車両の掃除をして過ごすが、なんだかソワソワしているオレだった。
浮き足立つ訳じゃないけど、ケンカ別れした友人に再会するみたいな・・・複雑。


「じゃあ行ってきます。」
そう言って、オレは小型の車に乗り込むと藤谷家へ向かった。

三度目の訪問。

今日はどんな仕事になるんだろう。
時間と距離と、人員と搬送内容によって料金も変わってくるが、病院の付き添いなんて時間がどれだけかかるか分からない。順番を待ってる間、オレはいなくてもいいんじゃないのか?と、考えながら走っていたら、わりとすぐについてしまった。

「失礼します。依頼を受けてまいりました。」

「はい、すぐ行きます。」

玄関を開けて待つオレにヨシヒサくんの声。
相変わらずの若い声だ。どうして腕なんか骨折したんだろうか・・・?

「じゃあ、お願いします。」
そう言って、挨拶をするとオレの顔を普通に見る。
ちょっとはバツが悪いとか無いのかな・・・

「病院の住所は伺っていますから、4時半には着きますよ。直接行っていいですか?」
オレはいつもの感じで、仕事としての態度で接した。すると、
「内田さんっていうんだね。この間は名前知らないままだった。」
ヨシヒサくんが少し笑みを浮かべて言う。

「・・・では、荷物をお持ちしますから・・・。」
オレは彼の言葉には反応せず、肩に掛けたバッグを預かると、腕を回して靴を履くために屈んだ躰を支えた。

細い華奢な背中は、オレの片腕にすっぽり収まり、この間羽交い絞めにした事を後悔する。ちょっと力入れ過ぎだったな・・・骨が折れなくて良かった、と。

「ありがとう。」
そう言って靴を履き終えると、玄関を出た。
門から入った時にも目にしたが、庭の桔梗の花は無事に咲いていて、もうすぐ時期も終わるんだろうか、枯れた花も多くなっていた。


車に乗り込むと、オレはまっすぐ前を見て目的の病院を目指す。

この続きはこちら↓
【桔梗】の咲く家 03


所どころの掲載で見にくいかと思います
申し訳ありません(/ω\)

現在、新たな物語を創作中
もうしばらくお待ちください  ・・え?!誰も待っていないって???( ゚Д゚)グワ~ンφ

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