『君と まわり道』 01


 やっと空が白み始めた早朝。
鳥の囀る声がシンとした空気にメロディ―を付けると、一気に清々しい気持ちになる。
.........筈だった。


「まったくやってらンないよっ!このヒモ男ッ!!出てけ!!」
「・・・・あ、・・・・」

ドサドサツ、と冷たいコンクリートの床にばらまかれるオレの服たち.......
「これも持って行きやがれッ!!!」

ガコツ.............

鈍い音をたてて転がったのは、オレがミサキにプレゼントした四万三千円の厚底ローファーシューズ。
まだ新しいブランドだけど、シンプルでアイロニカルなデザインが気にいって買ってやったのに.....

「み、...」
と、口を開いた途端目の前で安アパートのドアが閉まった。
バタンッ・・・・・


遠くで聞こえる鳥の囀りも、今では虚しくオレの心を濁す。


- あ~あ、コレ高かったのに.....
まだクレジット払い終わってないっての。あと何回だっけ?!


コンクリートの廊下に膝まづき、投げられた服をデイバッグに詰め込む。
それから、自分の履いていた靴を脱ぐと、四万三千円のローファーに履き替えた。
立ち上がってズボンの膝をパンパンと手で掃うと、ゆっくり廊下を歩きだし階段を降りて行った。



「淳(アツシ)・・・・・、又やらかしたのか?バカなヤツ。」

階段の踊り場に差し掛かった時、下の部屋の住人がオレの顔を見ながら言った。

玄関のドアを半分開けたまま、上下黒のスウェット姿でだるそうに頭を掻いている。その男は、かつての同級生。

「.......見て笑ってんなよ、テメエ、シバクぞ!!.........って、言うのはウソ。朝飯食わせてよ、拓海(タクミ)。」
そう言うと、オレは階段を三段飛ばしで降りた。


「仕方ねぇな、まぁ、入れや。」
「うん、悪りぃな。」

玄関で靴を脱ぐと、少しだけ聞き耳をたてて上の様子を伺った。
この部屋は、オレが間借り.....いや、居候していた部屋の真下にあたる。上の部屋で床をダンダンと踏みしめる音が聞こえると、
「ミサキ、今度ばっかりはマジギレだな。浮気なんかするから.........何度目だよ、本当にバカじゃないの?」

拓海がテーブルの上にコーヒーカップを置くと言った。
そのカップに乗せたドリップパックにお湯を注ぎながら、少し上目使いにオレを見ると、その口元はなんだか嬉しそうで。

「おまえ、人の不幸を喜んでるだろ?!かつての親友が追い出されたっていうのにさ。オレ、今日からどうすんの?行くとこないんだぜ?!」というが、拓海は平然とした顔でお湯を注ぐだけ。


コイツの性格は変わらないな。
もう十年以上も前から知っているつもりだったけど、時折感じるんだ。
拓海は、オレが死んでも平然と線香あげてくれるんじゃないかってな。涙のひとつも零さないで、ブラックスーツに身を包んで焼香して帰って行くんだろう。オレの遺影にも上目遣いに笑って見せる。そんな男だよな。


「実家に帰れよ。電車で一時間。店から通える距離だろう?!」

「・・・・またぁ、知っててそんな事を言う。オレが二年前親に勘当されたの知ってんだろ!」
「あ、そうだったな。お前がゲイだってのバレて、その日のうちに家から追い出されたんだっけ?!」

拓海の口元が、また嬉しそうにニヤケる。

「なあ、ここにおいてくれよ。家賃半分出すからさあ。」
コーヒーカップを受け取ると聞いたが、「だ~めッ!彼女くるから。・・・」と後ろを向かれてしまった。

「十年来の親友と、三カ月前に知り合った女と、どっちが大事なんだよ!!」
オレがキレ気味に言うと、「そんなの女の子に決まってんじゃん。お前、ホントのバカだな。」と、またまた腹の立つ言い方をされる。
さっきから、バカバカと、何度も言われているオレは、悔しいけど言い返せないでいた。

「チクショー・・・」

台所の椅子に腰掛けると、そのままコーヒーをすする。
こうやって、オレは何度も拓海にフラれているんだ。






***突然始まってしまいました。
山城 拓海(ヤマシロ タクミ)23歳と、渡部 淳(ワタベ アツシ)23歳の同級生コンビがお送りする日常的まったりなお話。
ゲイの淳とノンケの拓海。
二人は中学からの友人で、親友。
まだ、恋は始まらない。いや、始まっていたのかも?!


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