『君と まわり道』 04


 駅ビルの中の、社員の休憩所みたいな場所で、買ってきたサンドウィッチを頬張る。
長いテーブルに折り畳みの椅子が何脚か用意されてあって、色々な売り場の店員が食事をしたり休んだりしているが、ここへきて一年弱のオレは、少しだけ遠巻きにされる。

そんな中、「ひとりでご飯?」と、声を掛けてきたのは、あの四万三千円の厚底ローファーを買った店の娘だった。
中肉中背、特に美人て訳でもないが、どことなく他の女の子とは違った雰囲気を持っていた。
派手な服装ではない。髪はショートボブで、グレーのパンツに綺麗なピンクのカーディガンを羽織っている。

オレの隣に腰掛けると、小さな袋から弁当箱のようなものを取り出した。手作り弁当持参とは、なかなか女子力高いじゃないか。と見ていたら、ニヤリと微笑まれてしまう。

「あ、ゴメン、見過ぎだったな・・・何?自分で作って来たんだ?!」
蓋を開けると、カラフルな色合いのおかずがびっしり。つい、美味そうだな、と見つめてしまった。

「ふふっ、おいしそうでしょ?・・・・でも、これはアタシが作ったわけじゃないんです。」
そう言って一口箸をつける。

「お母さん?・・・・っていうか、地元だっけ?」
「まあね、地元だけど、これはアタシの彼女さんが作ってきてくれるの。ほとんど毎日。」
あ・・・・・、そういう事か・・・・。
なんとなく雰囲気が独特だと想えたのは、男女の違いはあるけども、互いにゲイだからだ。

「いいの?オレにカムアウトしちゃって、内緒にしていないんだ?」
聞いてみたが、彼女は尚もにこやかに微笑んだ。

「だって、お仲間でしょ?!・・・・・違った?」
ごく自然に言われて、別に隠す必要もないのかと思った。
「違わないけどね!・・・いいな、優しい彼女がいて。」と、弁当を覗き見するが、ふふふ、と笑うばかり。

「・・・ごめん、名前なんだっけ?靴屋の娘だよね?!」

「そう、名前は’チアキ’・・・その履いているクツ・・・、この間うちで買ったのでしょ?確かプレゼントって言ってなかったっけ?!」
オレの足元に目をやると、箸を持つ手を止めた。

「・・・そうなんだけどさ、事情があって、戻ってきちゃったんだ。ヒューンツて・・・・・」
オレが手を上げて、靴が飛んださまを追うように描くと彼女は笑った。
「あはは、オモシロイ。・・・でも、凄く似合ってるよ。良かったんじゃない?自分のモノになって。」
屈託のない顔で笑いながら言うから、オレはいつの間にかフラレた事を忘れそうになる。

異性の友人は何人かいるが、オレの事を理解している人間は何人いるだろう。
特にゲイだと名乗るのも変だし、普通に友達として接していると、ある時から妙に色目を使ってくるから焦る。オレに気があるのが分かると、自分から少し遠ざかる。そうすると、大抵はそこから近づくのをやめてくれたから。

「今日って、早番?何時あがりなの?」
オレは彼女に聞いてみる。なぜかな、店員と客で接した時とは違い、凄く話しやすかったし変に意識をする事も無くて楽だったから。

「7時あがり。そっちは?」と、彼女。

「オレ、今日は6時なんだな~。あ、でも暇があるんなら晩飯とかいかない?」
「いいけど、待っててくれるんだ?・・・彼女も呼んでいいかしら?」
「・・・いいよ、楽しくなりそうだし。後でショップに顔出すから、場所決めておく。終わったら来て。」
「うん、じゃあ、又後で。」


オレは、深く考えもしないでチアキちゃんを誘ったが、互いにゲイだと分かっているから安心していられる。
ちょっとビアンの世界も覗いて見たい気持ちもあった。うまくいけば今夜の宿も提供してもらえそうだし。

拓海の所に行くつもりだったけど、朝の様子じゃあ無理っぽいもんな・・・・・。
どうしてあんなに、頑なな性格になってしまったんだろうか・・・
オレがいけないのかなぁ・・・・・




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