『君と まわり道』 05


 駅ビルの店舗は、常に行き交う人々で忙しくて、その日の売り上げも上々のオレは、山野辺さんに挨拶をすると店を後にする。

社員用の通用口でタイムカードを押すと、一旦ビルの外へと出た。
チアキちゃんの終わる時間まで、少しだけ外のカフェでコーヒーでも飲もうと足を運ぶ。

交差点の角にあるコーヒーの専門店で、カフェモカを注文すると、オレは外のテーブルについた。ここがお気に入りの場所。
ぼんやりコーヒーの香りを楽しみながら、歩く人の姿を見ているとなんだか落ち着くんだ。
雑踏の中で落ち着くなんて、ちょっと変わっているんだけど、こんなに沢山の人の中で、オレだけが変わっているわけじゃないと思うと安心する。100人いれば、その中でゲイの男は何人いるだんろうか?
きっと一割ぐらいはいるんじゃないのか?
本当はそんな事を隠しながら生きている奴がいるはずだ。

・・・なんて事を想像しながら、向かいの信号で立ち止まる人影に目が行くと、思わず目を丸くした。

「・・・・拓海?!・・・・」
自然と声を洩らしたが、アイツの会社からは反対の位置になるし、今朝見た壁に掛けられたスーツとは違うものを着ていたから気になった。全身真黒の服装は、喪服でも無ければクラブの黒服ぐらいしか知らない。アイツは確かに黒い服が多いけど・・・

オレが目で追っているが、本人は気付いていない。信号が変わって歩き出すとオレの前を横切って行った。
視線はまっすぐ何処かを見ているようで、その先に何があるのか気になってしまうと、同じように拓海の前の方をじっと見る。が、特に変わった事も人も無くて、又視線を戻すとカップを両手で包み込んだ。

- 仕事が終わってから一旦家に戻って着替えたのかな?
あ、・・・デートか?!

・・・なんとなく、そんな所だろうと思って、オレはカフェモカを飲みほすと駅ビルに戻っていった。

エスカレーターに乗り込むと、目の前に連なる人たちをチェックしながら歩く。
平日だっていうのに、結構カップルが多いから、少し驚いている。


チアキちゃんのショップに行くと、丁度接客中で、仕方がないからオレは自分のクツを見る事にした。

この厚底ローファーは、背の低いミサキの為に買ってやったのに・・・・・
178センチのオレが履くと、確実に180センチを超えてしまいそう。
今日はいつもより視線が少し上で、見える景色も変わるものかと思ったけれど、たいして何も変わり映えはしなかった。






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