『君と まわり道』 06


 レジカウンターで、お客を見送るチアキちゃんに目配せをすると、オレの近くへ来てくれた。

「--マシューって店知ってる?スクランブル交差点の近くの。」と聞くオレに「うん、知ってる。ダイニングバーでしょ?」と確認されて「そう」と告げるとチアキちゃんが時計を見た。

「じゃあ、7時半ごろになるけど待っててくれる?」
「ああ、いいよ。適当にしているから、後で来てよ。じゃあね」

レジの奥で店長が見ているから、手短に話してすぐに店を出る。

マシューは、この近くのダイニングバーで、値段も案外リーズナブル。スペアリブが美味くて大学の頃から行きつけにしていた。
もちろん拓海とも行ったことがあったし、ミサキと知り合った場所でもあった。

ひょっとしてミサキと顔を合わせたら、なんて思ったが、その時はその時で。
朝帰りしたオレを許せないんだろうけど、荷物を廊下に投げ出すなんて、ちょっとヒドイ。
オレはホームレスになった気分で、拓海にも断られるし山野辺さんにもいい顔されなくて、本気で焦っていた。



先に’マシュー’へ着くと、さっき電話予約したものだと告げる。
店員に奥の席を案内されて、そこに腰を降ろすと窓の外を眺めた。

行き交う人をぼんやり眺めていたら、二年前、実家を追い出された時の場面が蘇って身震いする。
ミサキがオレの服を投げ捨てたように、オレのオフクロはオレの部屋のものをベランダから庭へ投げ捨てた。
『-----気持ち悪い』
そう言われて、オレは愕然とした。

写真に写る男ばかりの中で、オレは気分があがって嬉しそうにしていたが、周りの男も上半身裸になっていたし、キスをしている姿も写り込んでいたからだ。確かに『気持ち悪い』よな?!

そこは言われても仕方がない。
でも、オレの人生まで否定しやがって、産まなきゃよかった、なんて言われたら出て行くしかないだろ。

-----今更な事を-----

もう親とは会っていないし、大学もアルバイトをしながらどうにか卒業出来たから、これからは自分の好きなように生きてやるんだ。拓海には、事あるごとに実家へ戻れと言われるが、死んだって戻らないと決めている。

そんな事を思い出しながら、先にビールを注文して飲んでいたオレだが、「渡部?・・・・」と、背後から声を掛けられて振り向いた。

ここにも全身黒服の男が・・・・・

今日は何かあるんだろうか・・・・・?

「おぅ、杉本。・・・・・何、お通夜か?」
見たままの姿を聞いたが、「ああ。」と言われて驚いた。

「え、マジで?・・・・・誰か知り合いが無くなったんだ?」
「ああ、まあな。・・・・・あれ?山城から聞かなかったの?」
杉本がオレの椅子の背もたれに手をつくと言った。が、今朝、拓海と会ったけど何も言われていないし・・・・まあ、急に通夜に行くことになったのかもしれないが、誰かオレも知っている人だろうか。

「山城が高校の時付き合ってた、・・・ほら、背の高い美人の’松原あけみさん’だよ。」
杉本の言葉に声を失うオレ。

少し前のそんなに遠くない記憶は、忘れたくても忘れられない光景をオレの脳裏に映し出す。







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