『君と まわり道』 10

 
 灯りを挟んで対峙するオレと拓海。

その距離は、殴り掛かれば容易に拳が届く。多分オレの顔面にモロだ.........。
でも、拓海はじっとしたまま動かないでいた。オレの顔をじっと睨みつけたまま。


- どうしようか........、ここであの事を言ってしまおうか。

オレの鼓動は早鐘のように鳴り出した。言いたくて言いたくて、でもずっと言えなかった言葉。
それを松原に指摘されて、アイツの思惑どうりだったかもしれないが、それに乗ってしまったオレは後悔する事となった。


「た、くみ........お前の部屋で話そう。こんな所で大きな声出したら近所迷惑だし.....」
やっと絞り出したオレの声は震えている。が、拓海はオレの言葉には返事をしないでその場を離れようと歩き出した。

「拓海!.......」
つい叫んでしまうと、「..........’まとも’じゃないなんて言って、.........ごめん。俺、酔ってるんだ、だから.......何するか分からない。」
そう言うと静かに歩いて行く。


オレはもう、それ以上は言葉も出なくて.......。

アパートの階段をゆっくりあがって行く姿を見ているしかなかった。


もう一度自転車に跨ると、今しがた来た道を戻っていく。
駅前のネットカフェを目指すと、さっきまでの酔いは完全に冷めてしまい、オレの胸にポッカリ開いた穴がまた疼きだす。




- - - 

小さく狭い空間では、身体を伸ばす事も出来ないで、ただパソコンの前に肘をつくと瞼を閉じた。
松原が亡くなった理由を聞かないままだったオレは、高校の時の同級生で杉本とも仲の良かった友人に連絡を取ってみる。

「...あ、中島?......ごめん、こんな時間に」
『..........え?渡部か........、なに?』

半年ぶりの電話に驚きを隠せないみたいだったが、『あ、今日、松原の通夜に行ったの?俺、仕事で遅くてさあ、行けなかったんだよな.....。』といった。

「いや、オレも行けてなくって.........、どうして亡くなったんだ?病気でもしていたんだろうか。お前知ってる?」
何気なく聞くつもりだったが、電話の向こうの中島は、ん~~~~、と言ったきりで。

「あ、ゴメン、知らないんなら、」と言いかけると、『あんまり大きな声では言えないんだけどさ。松原、自殺かもしれないって・・・。』
中島の声のトーンは思い切り下がっている。誰にも聞かれたらいけないんだろう。


「..............え、............マジで?............嘘だろ?!」

オレは耳を疑う。まさか、アイツが?

『これは、あくまでも噂だからな。親は心筋梗塞で亡くなったって言ってたけどさ。』

「..............ああ、そうか、噂なら......。心臓弱かったっけ?」オレが聞くと、『まさか!!先月、合コンに来てたよ。俺会ったもん。』と言った。
心臓は何処でどうなるか分からない。もし、持病があるのなら、尚更だった。
若いからと言って、過信してはいけない。そう思いながらも、さっき耳にした’自殺’の文字が重すぎて、オレは率直に聞く事も出来ないでいた。もしそうだとしても、周りがとやかく言えることじゃないし........。
知ったところで仕方のない事だ。

「ごめんな、有難う。じゃあ、明日は告別式に行くんだろ?」

『それが.....、明日は出張で。だから香典だけ杉本に頼んだんだ。渡部は?』

「......オレも、.........仕事で行けない。杉本に頼んでおこうかな。」

『ああ、そうしろよ。』

「そうする。.......じゃあ、又な!」
『バイバイ~』


深夜の電話で申し訳ないが、どうしても聞いておきたくて.........。
尚更、心の穴が広がった感じはする。


ご覧いただき有難うございます

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント