『君と まわり道』 11


 ネカフェでシャワーを浴びたオレは、髪の毛も半乾きのまま急いで駅ビルに入って行く。
社員の通用口を通る時、いつもの警備員のおじさんにジロツと見られて焦る。ちょっと不審人物に見られるかも・・・・・。


「おはよう。」
「あ、おはようございます。」

「一応、身なりに気を付けてね!」
「・・・は~い。」

オレは、返事をするとロッカールームに行き、鏡の前に立つと髪の毛を見る。
眉毛に掛かった前髪がうるさくて、指でとかすと左右に流すが、猫っ毛で癖のあるオレの髪は湿気でクリンクリン。

- あ~ッ、もう、ヤだな!!この頭!

オフクロ譲りのこの髪質は大嫌いだ。ちょっと伸びると毛先が跳ねて苦労する。拓海の様な漆黒のストレートヘアーに憧れるけど、逆立ちしたって無理な話。

ロッカーの中に入れたバッグから、ワッチキャップを取り出すと目深に被った。
リネンコットンでオールシーズン活用できる優れもの。ヘアースタイルの決まらない日はこれさえあれば大丈夫だ。

それに合わせるVネックのコットンニットをTシャツの上から着ると、案外いい感じで。オレは、そのまま何食わぬ顔で売り場へと向かう。


『おはよう。・・・・・そのニット、素敵ねぇ。』
「あ、おはようございます。有難うございます。えへへ・・・」


『淳くん身長あるからいいわよね。・・・・・足りないのは’誠実さ’だけか~ぁ・・・・』
なんて、そんな事を言いながらレジ奥のストックルームへと消えて行く山野辺さん。

どうも、この人にはオレ、心底ゲスだと思われてるらしい・・・・・。
本気で心配になった。


- - - 

夕方過ぎて、客足の引ける頃になると、売り場の社員専用ドアから台車に乗せた段ボール箱を運び込んだ。
ガラガラと店に押してくると、三段に積まれた箱をレジの前の床に降ろす。

「ヨッ、と」
掛け声を入れながら箱を降ろし終わると、そこから夏物の衣料を取り出した。

『そこの棚のものを外して、こっちのレイアウト図見ながら並べていってね。』
「は~い・・・」

山野辺さんに言われた通り、彼女のレイアウト図のように商品を並べた。

お客さんの目線には、季節感の強いモノを
目線より下にはバッグや小物、シューズを並べていく。

オレは、この仕事が好きだった。
もちろん客商売だし、簡単な仕事ではないけど、着るものとか身につけるもので、その人を表せるって素敵な事だと思っている。

口下手な人間も、その人のセンスで人格を表せるんじゃないかって思うんだ。
言葉は要らないのかも。好きな物を共有して自然と友達になったり出来る。タトゥーやピアスもそうだろうな・・・・

『ところで、昨夜は何処に泊まったのよ。カレシに許して貰えたのかしら?!』
山野辺さんがTシャツを畳みながら聞いてきたから、「ネカフェで明かしましたよ。今日は寝不足っす。・・・・泊めてくれます?今夜」
それとなく聞いたが、『いいわよ』と、軽く言われて逆に驚いた。

「え!!いいんですか?・・・・ぁざっす!」

オレは心の底から助かった、と思った。そして、「カレシは・・・・・ダメっぽいです」と報告した。

『あら、やっぱり!・・・だよねえ~、仕方ないもんねぇ~。』

納得したように言われたが、腹は立たない。自分で蒔いた種だし・・・・。

『じゃあ、早く片付けて帰りましょう!』
「はい!」



大きな段ボール箱を空にすると、やっと店内は夏の装い。白い麻のシャツやコットンリネンのシャツ、それにヴィンテージのシューズが綺麗に並ぶと、気持ちはもう夏。昨日の暗いニュースは少しだけ心の片隅に追いやった。




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