『君と まわり道』 12

 山野辺さんの家までは、バスで15分。
仕事が終わると、ビルの通用口は食品売り場の出店で賑わう。売れ残った惣菜やケーキなんかが格安で売られているから、その日の食料には事欠かなかった。

山野辺さんにいくつか買ってもらうと、オレは荷物を持って後ろを付いていく。
バスの中は、もちろん混んでいるから座るなんて出来ないが、食料品が崩れない様に胸の前で大切に抱きかかえると、その姿を見て山野辺さんが噴き出した。そんなにおかしいのかな、と恥ずかしくなるオレ。

「結構混んでるんですね?オレなんて自転車通勤でよかった~」と、バスを降りた途端に口から洩れて、隣の山野辺さんをみる。

「もう慣れたけどね?!朝なんてもっとぎゅうぎゅうに混んでるんだから・・・」
そう言いながらも、スタスタと足早に歩くからオレも合わせた。



5階建てマンションの3階に、山野辺さんと一人息子の武(タケル)くんの暮らす家があった。
「お邪魔しま~す」と言って中に入れば、奥からドスドスツと廊下を走って玄関へ来たのはタケルくん。
「アツシくん、いらっしゃい!!今晩泊っていくの?」
オレの顔を見るなり聞かれて、ちょっとビックリするが、「うん、よろしくね。」と頭を撫でてやった。
えへへ、とニヤケる顔が可愛くて、小学3年生の坊やにキュンとするオレ。決して子供に興味があるとかじゃない。


「タケル、今夜は淳くんと寝てよね。あと、お風呂から出たら宿題みてもらいなさい。このお兄さん頭はいいから。」
ちょっとトゲのある言い方だけど、ここはガマン。一晩でも泊めてくれるなんて、ホント有難いと思った。

「オッケー、算数でも社会でも何でも教えてやるから。あ、一緒に風呂とか入るか?」
オレがタケルくんに聞けば、「え~~~~ツ、やだ!!」と、速攻で断られてしまった。
最近のガキはマセてるのか、裸を見られたくないとか思っているらしい。大浴場に水着を着て入るとか、ウソだろうと思ったけど、お客さんの子供が小学校の就学旅行の時にそうだったと聞いて驚いた。


早速テーブルの上に買ってきた惣菜を並べると、そこに追加して、山野辺さん手作りのみそ汁とサラダが添えられる。
頂きます、と手を合わせ三人で一斉に箸を伸ばす。久しぶりの賑やかな食卓にオレの心も和んだ。

実家に居る時は、家族の時間がバラバラだったし、こうしてみんなで食事をとることは無かった。
それが普通だと思って暮らしてきたから、家を追い出されて拓海のアパートで暮らしたときに、二人で食事をするのがくすぐったくて、慣れるまでは変な感じだったな。でも、いつしかそれが心地良くなっていた。
あんな事が無ければ、きっと今でも暮らせていたのかも・・・・・



「アツシくんさぁ、フラれたの?・・・・それで泊るところが無いって、お母さんが言ってた。」
「あ?・・・・ん、まあ、そんな所かな?」

子供は直球で聞いてくる。オレの心のざわつきなんか気にも留めてくれないんだ。

「ぼく、アツシくんカッコイイと思うよ?!きっとすぐに新しい人が出来るからさ、頑張ってね。」
「・・・・・うん、・・・・・ありがとな。がんばる。」
「じゃ、おやすみ。」
「ああ、おやすみ。」


タケルくんのベッドの横に布団を敷いてもらい、小学生から労いの言葉を掛けてもらったオレは、ゆっくりと瞼を閉じた。

昨夜はほとんど眠れなくて疲れもピークに達したが、変な噂でオレの気持ちが複雑になると、余計に神経は冴えてくる。
カラダは疲れているのに、何故か頭の中がうごめいて落ち着かない。

- 今日は告別式か.................

拓海は行ったのかな................

昨夜はどうしてあんなに酔っていたんだろう..............

アイツは、オレを許さないままなのかな................






ご覧いただき有難うございます
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント