『君と まわり道』 13


 暗闇の中で、バイブ音とともに点滅する携帯のLEDライト。

枕もとに置いたソレに手を伸ばしてみる。夜中に誰からの電話だろうか・・・・
目を擦って画面を見ると、そこに表示されている名前を見て胸の鼓動が大きく跳ねた。

- 拓海

「・・・はい、・・・」
掠れた声で返事をすると
『アツシ!!大変だ、拓海が運ばれたッ!!』
と、その声はミサキのもので、拓海の携帯からかけてきた様だった。

「運ばれたって、......どこに?」

『聖華病院。急性アルコール中毒だって!!すぐ来てよ!・・・全く、何処にいるんだよ!』

焦って話すが、ミサキが一緒に居るのにどうしてオレを呼びつけるんだよ。と思いながらも、オレの心臓もバクバクし始めて携帯を握り締める。

「分かった・・・すぐ行くから。」

シャツの上から胸を押さえると、一旦深呼吸をした。
それからゆっくり立ち上がると、隣のタケルくんを起こさない様に服を着替える。こんな時間に山野辺さんを起こすのは申し訳ないが、玄関のカギを閉めてもらわないといけないし、そっと部屋のドアをノックした。

山野辺さんはすぐに目を覚ましてくれて、オレが電話の件を伝えるとすぐ行きなさい、と言ってくれる。

タクシーを呼んでマンションの下で待つ。
人通りのないシン、とした闇の中で、整列した街灯の光を見ながら通夜の晩の拓海の顔が頭に浮かんだ。

拓海は酒が弱くて、自分で加減を知っているはず。決して限度を超えて飲むなんてあり得ないんだ。なのに、どうして?


- - - 
病院へ乗り付けたタクシーを降りると、オレは救急搬送の入口を探した。
ガラスドアの向こうに、ミサキの姿が見えて急いで駆け寄るが、ミサキは一人ではなかった。

「あ、...........こっちは、会社の同僚..........で、」
「こんばんは、土田です。」
「あ、どうも......渡部です......。」

一瞬の間があいたが、すぐにミサキが拓海の事を話しだす。

「昔付き合ってた娘の葬式があるって言って、今日は会社休んだんだ。で、夜になって俺たちと一緒に飲もうって事になって。」

ミサキの話では、いつも通りの様子でつまみを食べながらビールを飲んでいたらしい。
けど、10時頃になってもまだ飲み続けていて、流石に自分たちは仕事もあるし上の部屋に戻って行った。そのあとしばらくして、拓海の部屋から大きな物音が聞こえてビックリしたらしい。

「俺が拓海の部屋を覗くと、テーブルが横倒しになっていてあいつが倒れていたんだ。
吐いたのが喉に詰まってるみたいで、ひーひー言っててさ、慌てて救急車呼んだんだよ。」

「自分が、山城さんの口に指を突っ込んで吐かせました。」
土田君がオレに言うと、なんかバツが悪そうに俯いた。

「.......良かったです。吐かせてくれて、でなきゃ窒息死していたかも.......」
オレは土田君にお礼を言うが、ミサキには少しムカつく。

「なんで注意しなかったんだよ。拓海が酒弱いって知ってただろ?!飲ませんなよな!」

つい、そんな言葉を投げてしまい、それに反応したミサキがオレの顔を下から睨みつけるようにして見る。
「自分こそ、拓海が心配ならどうして逃げるんだよ!」と、怒ったミサキに言われて「え?」と首を傾げた。

「逃げるって?.......オレ、別に逃げてないし。ちょっと、色々あって........。」

「追い出されて可哀そうだと思ったから置いてやったけど、......俺、バカみたいだよ、全く。」

口を尖らせて話すミサキの顔が少し悲しそう。

「今、胃の中の洗浄をしているから、もう少しかかるって。運び込まれた時の状況はもう説明してあるし、後は様子を見るしかないから。とりあえず今夜は入院。明日また来るから、今夜はアツシが看ててよ。それぐらいはしてやってよね。」

「え?.......オレ?」

「そう、拓海さ、............倒れたあと、ずっとアツシの名前呼んでた。...........だから!」

「ぇ................」

看護士が手際よく点滴の用意を始めると、オレたちが待つ廊下にガラガラと音をたてた什器が運ばれて、ベッドに横たわった拓海の姿が現れた。

「...........拓海................」
声を掛けるが、うっすらと目を開けたような気がするだけで、瞼はまた閉じられた。

- どうしてオレの名前なんか.....................?





ご覧いただき有難うございます
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ


スポンサーサイト

コメント

非公開コメント