『君と まわり道』 17



 さっきまでの薄暗いバックグラウンドから、重い鉄の扉を開けて一歩踏み出せば、オレの好きな世界感が広がった。

ショップに入ると、そこはオレの一番ワクワクする場所で、昨日飾った商品のディスプレイも光っていた。


「おはようございます。すみませんでした。」
レジカウンターに居た山野辺さんに声を掛けるが、「大丈夫なの?」と心配される。
夜中に病院に呼び出されたんだから、心配するのも無理はない。それに日頃のオレの行動で、寝ていないのも知っているからだ。

「大丈夫です。医者にも注意されたし、もう飲み過ぎる事もないでしょ。ホント、人騒がせな奴で。」

「淳くんの親友?.........それとも元カレ?」
ちょっと口元をあげて聞くが、親友だった、と過去形にするとまたまた意味ありげに笑みを浮かべた。

「山野辺さん、いくらゲイでもオレは親友には手出ししませんからネ!.......ったく。」
ちょっと不愉快な顔を向けると、「ごめんごめん、まあいいわ、ゲイ事情に興味があっただけ。お疲れさん。」という。

オレは商品を畳みながら、親友だった、と言ってしまった事を後悔する。
過去形にしたのは変な意味じゃない。2年前に追い出されて、もう友達関係も崩れてしまったと思っていたからだ。

ミサキに拾われてからは、上と下の部屋で暮らしていて、互いの気配を感じる事もあった。でも、言葉を交わすのはオレがミサキに追い出された時ぐらいで。ほとんどは、時間帯も休みも違うから顔を合わせる機会もなかった。


気配だけを感じながら1年も住んでいたんだ。親友とは呼べないよな.........


夕方になると、会社帰りのOLが季節の先取りをしようと商品のチェックをしに来る。
こういう時は、オレも力が入るから、つい素材の話やなんかを語ってしまう。
それに、気にいってくれて購入までしてくれると、本当にこの商売はやめられないと思うんだ。

昔と違って女性が苦手だと思う時は、相手がオレに好意を寄せてくる場合だけ。普通の女友達や山野辺さんのような先輩なら全く問題ない。それに、女のお客さんもオレが接客すると喜んでくれるから、尚更力が入ってしまう。

「そういえば、帰る場所はあるの?カレ、本気で追い出したのかしら。戻って来いって言わない?」
心配そうな顔を向けられて
「あ~、多分それは無いっすね。向こうも別の男がいるみたいなんで。」といった。

「ま、・・・・なんだか展開が早すぎて、付いていけないんですけど・・・。淳くんたちの世界ってそういうものなんだ?!」

「いや、オレらの世界って............どんな世界っすか!普通ですよ。特に執着が無いだけっす。」

山野辺さんには分からないだろうな。男と女の世界もオレには分からないけど、オレは特に執着が無いっていうか.......。

一緒に居て楽しければいられるし、苦痛に感じるんなら無理に居る必要もないと思ってしまう。
浮気と言われる意味がよくわからない。


終業時間まで居ると、今日は拓海の家に行くと告げて、山野辺さんに挨拶をした。
「じゃあ、また追い出されたらうちに連絡して。タケルが喜ぶから。」
「はい、有難うございます。お疲れさんでした。」

「は~い、お疲れ~」



早速駐輪場の自転車に跨ると、オレは拓海のアパートを目指すが、途中でコンビニに寄るとあいつが食べそうなものを買い込んだ。ちょっと前の、大学の頃を思い浮かべながら懐かしい気持ちになると、アパートの階段を走って駆けあがる。





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