『君と まわり道』 22


 身体の底から沸き起こる、得体のしれない痺れる感覚。
拓海が我を忘れてオレにしがみ付く。こんな拓海は初めて見た。

「た、くみ..............」
オレが小さく呟くと、更に掴んだ指に力が入る。

まるで行き場のない感情を持て余すかのように、ただただオレに摑まって震えている。


「オレ、松原との事でお前が腹をたてて追い出したんだと思ってた。まさか、.............な。」
そう言いかけて、ふと気になった。
通夜からの拓海の様子が変だった訳は?
倒れて運ばれるほど酔いつぶれたかったのはどうして?

「..........中島に、聞いたんだけど.......、松原、自殺かもって噂、知ってる?」
オレは拓海に聞く。無茶な質問なのはわかっていた。

「........は、っそんなのウソだよ。あけみが自殺なんかするわけない。心筋梗塞だった。」
オレの身体の下で拓海は言ったが、中島も半信半疑でオレに言ったから、本当に病気だったのかとも思う。でも、そんな噂が出るという事には驚きを隠せなかった。そういう要素があったんじゃないのか?


「アツシがここを出て行ってしばらくすると、あけみがやって来た。」
「え?」
「......お前のアドレス教えろって、.........だから、俺、.................」
「え、..........教えたのか?」
「いや、..............お前がゲイだってこと、話したんだ。」
「............拓海、..............お前................」
「そしたらアイツ、俺とアツシがそういう関係なんだって誤解して..............、アツシはここには戻らないって伝えたのに.....」
「.............、その後も来た?」
「いや、一度だけだ。誤解して、勝手にショック受けて帰って行った。..............俺のせいなんだ、俺がお前の事話しちゃったから。」
「..............別にいいよ、ホントの事だし。ショックは、........受けるだろうな。ゲイのオレなんかとセックスしちゃって、とんでもないって思うよな.....。」

オレはゆっくりと身体を支えると、上体を起こした。
拓海もオレに回した手の力を緩めると、自分の顔の前で腕を交差させた。

 松原の死因はきっと心筋梗塞なんだろう。
でも、そんな事より心が痛むのは、知らず知らずのうちにオレと拓海の二人が、アイツの事を苦しめてしまったという事。
’松原あけみ’という女を介して、初めてオレたちは互いの気持ちを知ることが出来た。

こんなに長く一緒に居たのに.................

何処かで気づいたはずなのに、そこに蓋をしてきてしまったんだ。


「拓海、............とにかく今夜は寝よう。」
オレはそう言うと、もう一度拓海の横に潜り込む。

「...............うん。」

そんなオレの顔を横目で見ると、拓海は力ない返事をした。

暗闇の中、拓海の体温を感じながら、ゆっくり目を閉じる。
この世にいない’松原あけみ’の存在が重く圧し掛かる夜、時計の針だけがオレと拓海の時間を刻んでゆく。




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