『君と まわり道』 24


 駅ビルへと続く舗道を自転車から降りて歩く。
人混みに紛れていると落ち着くなんて、おかしいのかもしれないが、疲れた身体で自転車を押しながら歩く気分は最高だった。
逆に静かな部屋で一人でいる方が苦痛だったオレは、とにかく仕事が終われば遊び歩いていた気がする。

好きな奴とセックスをして、遊びに出かけて、とにかく自分の側には誰かに居てほしかった。
ミサキでも誰でも、オレを一人にしない相手なら誰だって良かったのかもしれない........。
- オレって、山野辺さんが思う通りのゲスかもな。
自分で自覚してしまうと、もう開き直るしかなくて......。
でも、拓海の存在だけは違っていた。
好きだけど、アイツはゲイでもバイでもないし、オレとは交わる事のない男。だと思っていたんだ。
............なのに、アイツがオレを好き?
何度も押し込めた疑問がまた頭をよぎる。



「おはようございま~す」
売り場に行くと、山野辺さんともう一人の店員、後藤チカちゃんに挨拶をした。

「おはようございます。」
「おはよう、」

「渡部くん、寝不足?」
と、オレの顔を見たチカちゃんが聞いてきた。
早速の質問に「そう」とだけ答えるが、事情を知る山野辺さんは知らん顔で商品を袋から出している。

「遊びすぎでしょ!」
「いや、...........まあ、そうかも。」
オレはチカちゃんに説明するのも面倒で、彼女が納得する答えをそのまま受け入れる。


「渡部くんモテるもんね。この前靴屋の娘とご飯してたの見ちゃった!.....女の子二人に男ひとりなんて、どんだけ~って感じ!」
明るい声で言われるけれど、そんなに嬉しいことではない。でも、チカちゃんはオレがゲイだって事を知らない。
この売り場でそれを知っているのは、上司の山野辺さんだけ。
まあ、何処かで気づいている人もいるんだろうけど。靴屋のチアキちゃんのように........。

「そこそこモテますけどね!.........でも、残念ながらあの娘たちは友人です。」
「え~、そうなんだー。渡部くんの彼女になる人は気が気じゃないね、モテる彼氏は嬉しいけど、私はダメだな~。ヤキモチ焼きだから!」
山野辺さんが黙々と作業をする傍らで、チカちゃんが手を止めて話すので、オレはちょっといたたまれなくなる。
 先輩が仕事してますけど!!!
って、オーラが出始めて、オレは焦って山野辺さんが出した商品を畳み直した。

流石にチカちゃんも気づいたんだろう、ビニール袋をひとつにまとめるとその場を離れてストックルームに行く。
 客待ちの仕事にはありがちだけど、店の中での会話は、つい盛り上がってしまうととめどなくて.........。
何処かでセーブしないと客も入りづらいし、それを注意する人もいないと本当に雰囲気を悪くしてしまうんだ。

「すみませんでした。」
オレが山野辺さんにそれとなく謝ると、
「ホントにヒドイ顔だよ?!友達、大丈夫なの?」と聞いてくれた。

「はい、今日は普通に出社しましたから、もう大丈夫みたいです。」
「なら良かった。...........淳くんが倒れないようにネ!」
「.............はい。」

 年上の山野辺さんは、オレの姉さんの様でもあり、母親の様でもあった。
タケルくんを女手ひとつで育てているからか、凄く頼りがいがあるし懐も深い。
もしオレが普通のノーマルな男なら、こういう人と連れ添いたいな。なんて思ってしまう。
.....まあ、向こうは望まないだろうけど。

「今週は天気もいいし、暑くなれば夏ものもジャンジャン売れますね。」
山野辺さんに言えば、「そうなるといいね。」と笑顔が出た。



- - - 
閉店後、本当に忙しい一日を過ごしたオレたちは、足もパンパンになるほどで、その日の売り上げを締めるのが楽しみだった。

 レジ袋を持って山野辺さんが「お先に~」と帰っていくが、オレは慌ててその後に付く。
「.....え?なに?」
不思議そうな顔で見られて、ちょっとバツが悪かったが
「実は、友人も回復したんで今夜は泊るところが無くって.....。」といった。

 一瞬、首を傾げた山野辺さん。
「あら~、そのお友達は淳くんに看病してもらえるぐらい親しいんでしょ?だったら彼に泊めてってお願いしてみたら?それに昨日の今日で、また具合が悪くなるかもよ?!」
そう言うと、レジ袋を掲げてバイバイというように揺らして行ってしまった。

「渡部くん、帰るよ~。」と、チカちゃんに急かされたオレは、仕方なくビルを後にした。

 山野辺さんのいう事も一理ある。
確かに、親しい間柄だし、普通なら暫くおいてくれるんだろうけど.........

昨夜は勢いで拓海にキスしちゃって、その後の事なんか考えていなかった。
友達やめるって言われるの覚悟してたし.....。
でも、想定外の答えが返ってきちゃって、オレはどうしたらいいんだか分からなくなったんだ。
なし崩し的に拓海と関係持っちゃうってのも............、無理な話。
アイツ、男となんかセックスできやしないだろ?!

.......................そうだ、中島に電話してみよう。




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