『君と まわり道』 25


 街路樹と人の間を縫う様にして歩くと、交差点の指定した場所で中島が立っていた。

「よお、ごめんな。」
「おお、いいって・・・。」

オレは、今夜この中島の家に泊めてもらおうと連絡を入れたが、自宅の場所がわからないのでオレが分かる場所まで迎えに来てもらった。中島は高校の時杉本と仲が良くて、杉本と拓海が同じクラスだったので自然とオレとも話す様になっていた。
 
友達の友達はみな友達って訳で、オレは図々しく宿を借りにきたが、それでも嫌な顔ひとつせずに中島は笑顔で迎えてくれる。

「そういえば松原の香典、杉本に頼んだけどさ、今日山城がお前の分立て替えて払ってくれたらしい。電話あった?」
そう聞かれ、「いや、多分ない・・・」と携帯のメールも確認した。

「おれ、昨夜拓海ん家に泊めてもらってたから、それでかな?」
並んで歩きながらそう言ったが、今夜はあそこへ戻るなんて伝えてないし、どうしようかと思った。

「一時期一緒に住んでたじゃん。アレか?山城に彼女が出来たんで厄介者になったとか・・・?」
「・・・・ま、そんなトコ。・・・拓海の彼女見た?」
中島は杉本繋がりで、たまに拓海とも会う事があるらしかったから聞いてみる。
「見てない、杉本は会ったって言ってた。」

「へえ、どんな娘?オレさ、前はアイツの上の部屋に住んでたんだけど、一回も見た事ないんだ。」
「マジで?!・・・・変なの!」
中島がそう思うのも無理はない。だって傍目には、オレと拓海はすごく親しくしていたし、もと同居人。それなのに彼女を紹介してもらえないなんてあり得ない。

「ま、3か月ぐらいしか経っていないんだろ?逃げられなきゃそのうち紹介してくれるさ。」
「そうだな、・・・・渡部はどうよ?!モテそうじゃん。アパレルなんて女の子多いしさ。」
中島が羨ましそうにオレを見る。

「・・・・まあ、そこそこ。でも、遊んでるよ。恋人とか面倒だし。」
オレが言うと、「お前さ~、高校の時もそんな事言ってたな。でも、一度も女の子と遊んでるとこ見てないし。」と笑われる。
その筈だ、女子からは遠のいていたから.............。
でも、同級生でオレがゲイだと知るのは拓海しかいない。アイツが誰かに話していたら別だけど・・・・

「いう程モテないって事だな?!ははは・・・」と笑っておくが、中島もそれ以上は女の話をしなかった。

 待ち合わせの交差点から歩く事10分程で、中島の家に到着するが、そこはマンション。

「あがって・・・。」
「お邪魔しま~す。」

通されたのは、大学から一人暮らしを始めたワンルームマンションの一室。
白い壁にアイドルのポスターが貼ってあって、オレは少しだけ引いた。

「中島って、こういうの趣味だっけ?」と聞いてみると、「まあな、この中じゃこの娘が一番の推しメン。」
ちょっと照れ笑いをしながらも、指差す先には満面の笑みを浮べたフワフワの女の子がいた。
「・・・・へぇ、可愛いじゃん。・・・・・」
そう言うと、中島が更に照れながら笑う。

普通の男はこういうものか・・・・?
オレにはよくわからないんだけど...................。


- - - 
シャワーを借りて、その晩は床に寝袋を敷いてもらった。
なんでも、中島はキャンプが趣味らしい。布団なんかは無いし、ベッドはシングル。大きなオレとじゃ絶対添い寝は無理だし・・・・・。

真っ暗な天井を見ながら「松原、やっぱり心臓病だってな。」と、拓海に聞いた事を中島に話した。
「ああ、杉本も言ってた。心筋梗塞じゃなくて、なんかスポーツ選手とかがなるようなので、心室細動とかって聞いたな。突然だったらしい・・・。」
「そうか・・・・。若いのに可哀そうだよな・・・。」
オレは心からそう思っていた。あの事は少しだけ後ろめたい気持ちになるが、松原の本心は知らなかったし、拓海が話さなくてもオレに告られていたら自分でゲイだという事を告げたと思う。
今はただ、安らかに眠ってほしいと願うばかり。


- - - 
 次の朝、中島の出勤時間に合わせて一緒にマンションを出る。
サラリーマンの通勤時間にオレがいるって不思議な感じだった。遊んだ次の朝帰りの時にはこういう風景に出くわすが、満員のバスとか電車に乗るなんてゾッとするな、と思うオレ。あのまま企業に勤めていれば、きっとオレも今頃はこういう通勤ラッシュにあっていたんだろうな。

「じゃあ、ありがとうな。また今度お礼するから。」
中島と別れ際に言うと、「いいって、また遊びに来いよ。」と言ってくれた。
オレたちは、軽く手を上げるとバス停で別れる。
そして、出勤時間までまだあるオレは、何処かで時間でも潰そうとモーニングを出すカフェに入った。

小さな店だが、中にはサラリーマンやOLの姿が目立つ。スーツ姿ばかりで見分けがつかないが、オレの視線の先に居た男にハッとなった。OL風の女と向かい合ってモーニングを食べている拓海の姿を見つけると、胸がざわついて変な感じがする。

オレが見ていたアイツの顔じゃない。そう思ったら、座るのをためらうオレは、店から出ようとドアの方へ向かった。







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