『君と まわり道』 30


 拓海の意外な一面を見る事になったが、なんとなくオレの気持ちも固まった。
少し離れたところから、オレを見ていたような目は、こんなに接近したのに変わらなかった。いつでも冷静な部分は失わない。
だからこそ、オレが拓海を抱いたとしても変わらないのだろうと予測できる。

隣で、すやすやと眠る拓海を横目に見ると、これまでの疲れが一気に出たのか、身体がズーンとベッドに沈み込む。そうして目も開けていられない程朦朧としてくると、深い眠りに落ちた。


 あくる朝、布団の中のオレに声を掛けると、「今日帰って来る時には、服とか一式持って帰って来いよ。」という。
「..............あ、.............ああ、分かった。」
寝ぼけ眼のオレは、自然に返事をしたが、拓海がドアを開けて出かけて暫くしてからハッとなった。

- 帰って来る時・・・・って言ったな。それに服も持って帰って来いって・・・・・・・。

言われて、こんなに嬉しいと思う自分にも驚く。
ここに居てもいいって事なんだ?!・・・・この間は、あんなに邪険に断られたってのに・・・・。

布団の中でちょっとニヤッとなったオレだが、また眠気に襲われて寝てしまった。



- - - 
 二度寝は身体に良くない気がする。自転車のハンドルを持つ手に力が入らないくらい眠気が取れなくて、ビルの更衣室に着くころにはぼうっとなっていたオレ。足元もふらついて、警備のおじさんにも「大丈夫か?」と心配される程だった。

兎に角売り場まで行ったオレは、「おはようございます。」とチカちゃんに挨拶だけしておくと、ストックルームへと消える。
- おかしいな........ここまで眠気に襲われる事ってないんだけど........。

「どうかしたの?」
心配そうにチカちゃんが覗きに来るが、床の段ボールケースの上に座り込むオレを見ると声を掛けた。
「あ、ゴメン。大丈夫だから.......」
そう言って立ち上がろうとしたら、身体がふわりと軽くなってそのまま後ろの棚にぶつかる。
積んであった洋服のストックが崩れ落ちて焦ったが、これは目眩か........と、膝まづいた。

「ヤダ、ちょっと、大丈夫じゃないよ!!」
「ん、.....ゴメン、なんか変だな..........。」
「駅ビルの医務室があるから、行ってみる?」
「..........ヤ、ちょっとだけ静かにしていたら治るよ。ゴメン。」
「え、でも、.............。」
チカちゃんの言葉は嬉しいが、今は動くのも良くない気がして少しだけそのまま座り込んだ。


目頭を押さえて暫くすると、「だから言わんこっちゃない!・・・淳くんが倒れてどうすんのよ?!」
山野辺さんの厳しい言葉がオレの頭上に響いた。
今日は店長会議で、昼には戻ると言っていたから、もう昼になってしまったのかと思うが、オレは顔を上げると「すいません。」とうな垂れた。

「どれ?!」と言って、額に手のひらをかざす。
「あ、............熱っぽい。風邪かなんかかな?今日は帰りなさい。」
山野辺さんが言うと、「ひとりで帰れますかね?」と、チカちゃん。

「あ、.........大丈夫です。帰れます。」
オレが身体を起こそうとしたとき、
「そうだ、友達の.......、看病した子に電話してみよう。迎えに来てもらいなさいよ。」
突然言われて、オレは焦る。昨日の今日で、こんな状態恥ずかしすぎる.......。

「イヤ、いいですから、帰れます。タクシー使うんで.........。」
必死にいうオレに、山野辺さんの手がポケットに入ると、携帯を抜き取られ履歴を見られる。
「あっ、ちょっと・・・・・」
オレが阻止しようとするが、身体はひるがえされて、「ええっと-----、そうそうコノ名前。タクミくんだわね。」と言って電話をかけてしまった。
「・・・・・山野辺さ---ん、」オレは力が出なくて声だけで抗議をするが、
「あっ、わたくし渡部の上司で山野辺と申します。-----はい、そうです。あの、渡部が具合悪くなってしまって、一人で帰れないもので、よろしかったらお迎えに来てもらえないかと-----。」
山野辺さんは、ここの場所を告げると「よろしくお願いします。」と言って電話を切った。

「-----山野辺さん-----、」
頭を抱えるオレは小さな声で呼んだが、「すぐに迎えに来るって!・・・・・丁度昼休みで良かったわね。フフ、」と口角をあげた山野辺さんだった。

 自分では気づかなかったが、熱が出ていてフラフラしていたようだ。眠いと思ったのは朦朧となっていたせいか・・・。


少しすると、拓海の声が聞こえ、オレのいるストックルームにやって来た。
「おぶってやろうか?」開口一番、オレの顔を覗き込みながら聞くが、「ヤだよ。」というオレ。
「下にタクシー待たせてるから、このまま帰るよ。荷物は?」
「あ、.......まだロッカーに入っているけど、まあ、いいや明日でも。」
「なら、このまま帰らせてもらいます。連絡いただいて、有難うございました。」
拓海は山野辺さんとチカちゃんにお礼を言って、オレの腕を取る。

「あ.......いいえ、どういたしまして.........。お大事に。」
「お大事に~」

二人の声を背中に浴びるが、少し先でチカちゃんの「カッコいい!!マジ、タイプ!」という声が耳につく。
もちろんオレの事じゃない。初めて見る拓海に向けての言葉だった。

オレはチラリと拓海を見るが、真剣な顔で前を向く姿に惚れぼれしてしまった。





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