『君と まわり道』 31


 ビルに面した路上で待たせたタクシーに乗り込むと、拓海がアパートの場所を告げる。
先に乗り込んだオレは、拓海に身体を預けるようにもたれ掛かると目を閉じた。

 「お客さん、何処か具合でも悪いんですか?エアコン入れましょうか」
タクシーの運転手に聞かれたが、「すみません、二日酔いなんで・・・ちょっとだけ入れてもらえますか?」と、拓海が言う。
オレは黙ったまま聞いていたが、拓海のこういうソツなく返答が出来る所を見習わないと、と思った。企業の中で上司や同僚や客先にもまれているんだろう。運転手に心配されないように気遣ってくれる。

「ごめんな、迎えになんか来させて.........、」
オレが小声で言うと
「ば~か、気にすんな。お前だって病院に来てくれただろ?!お互い様。」
「うん、.........でもさ、.........」
言いかけて、アパートの近くの建物が目に入ると口をつぐんだ。


タクシーを降りると、なんとか部屋までたどり着くが、ベッドの淵に腰を降ろしたオレの服を拓海が脱がしにかかった。

「ぁ、自分でやるし.....」というオレに「じっとしていろ。」と身体を押されてベッドに横倒しにされる。

拓海はオレのシャツやパンツを脱がせると、箪笥の中から自分のTシャツを出して着るように言った。
黒い大きめの半袖Tシャツに袖を通す。頭を抜いた時、微かに拓海の香りがして、それをスンツ、と鼻の奥で嗅ぎ取った。

「なんも食ってないんだろ?前にアツシが買ってきたレトルトのお粥が残ってるから、取り敢えず今は寝て、起きたら食え。」
さっきのタクシーの運転手に言ったのとは大違い。ぶっきらぼうな言い方だが、言いながらオレの額に冷たいシートを貼って、頭を撫でるから可笑しくなる。

「うん、ありがと................。」
それだけ言うと、布団を掛けられてポンポンと手を乗せられた。まるで子供にするみたいに.......。

「早く帰る。それまでゆっくり寝てろよ?!いいな。」
「........ん、」

目を閉じて意識の中で拓海の足音を聞くと、パタン、とドアが閉まる音がした。
昨日はオレがあっち側だったのに........、自分で情けなくなるが、すぐに眠りの淵に沈んでいく。




- - - 
次に目を開けると、すでに外は暗くなり、この部屋の電気は小さい照明だけになっていて、まどろんだオレの視界には気持ちいい。
拓海が何時に帰って来るのかは分からないが、又、こうして誰かの帰りを待つ日が来るなんて思ってもみなかった。
ほとんどはオレの退社時間の方が遅くて、ビルの店舗が閉店してからだと9時をまわってしまう。早番の日は6時あがり。
前にミサキと暮らしていた時は、ミサキが早くてオレの帰りを待って飯とかも作ってくれてたっけ.........。
そんな事を思い出すと、なんとなく腹の虫が鳴る。まだ弱々しい空腹感だったが、壁の時計を見ると布団を剥いで起き上がった。

上体だけ起こしたが、少しぼんやりした感じはする。冷たいシートはもう剥がれてしまっていたので、おでこに手を当てると自分で熱のあるのを確認した。
- 薬、あったかな............

ゆっくりとベッドから立ち上がると、自分の鞄の中を漁った。が、あるわけもなく......。オレは身体が丈夫な方で、体力には自信があったから夜更かししても平気だと思っていたんだ。それで、こんな事になった。


コツ、コツ、・・・・・
外の通路に足音が聞こえると、カチャリとドアが開いた。

「..........あ、起きれた?!」と、拓海がオレを見る。
「うん、たった今起きたところ。薬探してたんだけど。」
そういうオレに、ブリーフケースを置いた拓海が手を伸ばしてくると額に触れる。自分のデコにも手を置くと、「熱、まだあるっぽいな。お粥食べたら薬飲んどけよ、この中にあるからさ。」と、ベッドの下の薬箱のようなケースを指差す。

「うん、そうする。」
「あ、俺が用意するから、アツシはベッドに居ろよ。」
またまたオレの身体を押しやると、ベッドに寝かせる。掛け布団にくるまったオレは、目だけ覗かせると、にこりと微笑んだ。






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