『君と まわり道』 32


 キッチンに立つ拓海の後ろ姿を眺めながら、オレはぼんやりと昼間の事を思い出した。
近すぎて気づかなかったけど、拓海はチカちゃんが言うようにカッコイイ。いや、気付いてはいたんだ。
拓海と友人でいる事は、とても自慢だった。オレより成績も良かったし、ほんの少し背も高い。何かにつけてオレの少し上をいっていたが、それが悔しくない程傍に居る事は心地よかった。

なんとなく、自分は同性に興味を持つ人種なんだって分ってきた時、すぐに拓海の顔が思い浮かんだが、女子にモテていたしオレとは違うんだって切り離した。
居候していた時も、まさかこんな事になるなんて思ってもいなくて、オレは普通にゲイバーで遊んだし朝帰りもした。今更ながら、自分の生活が歪んでいたって思うけれど、この先どうすればいいんだろう.........。



「出来たぞ。」
キッチンのテーブルにお粥の入った鍋を置くと茶碗によそってくれるが、そんな姿をぼんやり見るオレに気付くと、「おいっ、早く食えよ。それともベッドの中で食べたいのか?俺に食べさせてほしい、とか?」と、言われる。

「あ、起きるから。」
オレは焦ってベッドからはい出した。まだふらつくが、立ち上がると椅子に座り茶碗の中のお粥をすくう。
オレの好物の玉子粥は、本当に久しぶりの味だった。一緒にテーブルの上に置かれた梅干を見たが、それには触れないようにした。梅干は苦手。拓海が健康の為に食べているらしいけど、彼女がくれたんだろうな。

「あ、・・・・・思い出しちゃった、オレ。」
「・・・・・なに?」
目の前で、同じようにお粥を口に運ぶ拓海に、突然の言葉。

「お前、彼女いるじゃん。昨日の朝の人?アレ、彼女じゃないの?!」

「・・・・・ああ、そうだった。」

「・・・・だった?」

「うん、別れたから、昨日。」
「え?」

驚いた。3か月前に告られて付き合い出してから、先週までは彼女優先の男が・・・・・。
オレがミサキに追い出された時、オレよりも彼女を取るって言っていたのに・・・・。

「拓海って、意外にあっさりしてるんだな。彼女、泣いたりしなかったの?」
少しだけ気になる。あの朝の人だったら、凄く真面目そうな感じだったし、悪い事したような気がする。

「泣かないさ。まだそこまでの付き合いじゃない。仕事が忙しかったし、同じ職場だけど会社の中ではあまりベタベタしなかったからな。」
「へぇ、そんなもん?!もっと男と女の仲ってどんよりするのかと思ってた。」
オレが食べながら言うと、拓海は笑って「長く付き合っていたら、そういう事になるかもな。けど、俺もアツシと一緒で長続きしないんだ。」と言った。



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