『君と まわり道』 35

  遅い昼飯を取ろうと、二人でアパート近くのコンビニエンスストアへ向かった。

社会人になってからは、土曜日の昼下がりに住宅街を歩く事が無かったオレは、ちょっと新鮮な気分を味わっていた。
「そういえば、オレ、拓海と休みが合わなくて、こんな昼間に二人で歩く事なんて無かったな。」
「アツシは平日休みだもんな。土曜日、日曜日に休むなんてあり得ない。」
拓海が言う通りで、みんなが休みの時ほどオレたちの仕事は忙しくて。

「学生の時以来じゃないか?こういうの。」
「そうだな、なんか変な感じ。」
拓海は少し照れたように下を向く。

懐かしいあの頃の記憶を辿れば、あまりにも変わってしまったオレと拓海の関係に驚くばかりだけれど、それでも、この関係もいいもんだと思った。互いに気になる存在でも、何処かでまだ戸惑いがある。流石のオレも次に進む勇気が持てなかった。

恥ずかしいけど、初恋の様な気さえしている。
身体の関係を持ったのは片手じゃ足りないオレが、拓海に対してだけは慎重になるんだ。

考えているうちにコンビニの前に到着するが、目の前のドアを開けると、早速弁当売り場へ。
棚に並んだ美味しそうな弁当を片っ端から吟味していると、「アツシはお粥の方が良くないか?」と言われる。
「もう大丈夫だって。いくら美味くても毎日は食えないし。」
そう言いながらも、オレは一応ヘルシーな弁当を手に取った。それに今週は、ちょっとお金も使いすぎたし..........。

「ここはオレが出すからさ。」と拓海に言って、カゴをレジに持って行く。
美味そうな拓海の焼肉弁当を横目に、ちょっとガマン。給料が出たら焼肉を腹いっぱい食べたいな、と思った。

オレたちは会計を済ませると、店の外へと出た。が、入れ替わりに入って来る人の姿を見たら驚いた。

「あ、............」

「.........オオ、どうも..........。」

少し間があいて顔だけ向けたが、ミサキはこの間の土田くんと一緒だった。

「どう?良くなったのか?!」
ミサキが拓海の顔を見て聞いている。この間の倒れた後の事を聞いているんだろう。
「俺はもういいんだ。みんなに迷惑かけて悪かったな。有難う。」
「や、いいって。結局は、アツシに面倒看させたし.....。」
そう言うとオレの方を向いて笑った。

「........まあ、な。」
オレが肩をあげる。すると、ミサキは隣の土田くんを指差して、「俺のカレシ。」と紹介した。

「..............。」
分かってはいたが、こんなに堂々と言われると、最近までのオレの立場が.............。

「よろしく。」と、土田くんに言われると尚更いたたまれなくて。
病院で顔を合わせたのはほんの短い時間だったし、オレもパニックになっていたから、こんなにじっくり見るのは初めて。

「どうも、・・・・・」
オレがそれだけ言うと、拓海は「またな、」と言ってその場を離れた。

なんとなく背中に見られている気配を感じながら、オレたちは来た道を戻って行くが、互いにかける言葉がみつからなくて黙ったまま。足元のアスファルトだけを見ながら歩く。
不思議とミサキに対するモヤモヤは無い。オレが悪かったし、あの日ミサキがとった行動は土田くんへの気持ちもはっきりしていたからだろう。いつまでもオレなんかを引きずっていたら堪らない。

アパートの部屋に戻ると、弁当をテーブルに置いた拓海がオレを見る。
視線を感じてオレが顔を向けると、「もう、戻れないな。」といった。

「.........ミサキの所に?...........オレが?...........ははっ、」
オレは拓海に笑いかけると言ったが、すぐに真顔になると手を伸ばして拓海の腕を取った。

「こんなオレだけど、よろしく頼む。オレは、拓海と付き合いたいから。」
「........うん、わかった。」

ぎこちない仕草がなんとももどかしいが、拓海の腕をそのまま引き寄せると静かにくちづけをした。



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