境界線の果てには。(033)

真咲は教授の用事を済ませると、3限の教室へと向かっていた。

「ナカノ!」 背後で呼び止められ振り返る。

高木が手を上げて駆け寄ってくるので、少し待っていると
「あれ、今日は青木と一緒じゃねぇの?」と聞いてきた。

「広斗は今日出なくてもいいんだってさ。単位取れてるらしい。」
そういう真咲に、
「いいなあ、アイツ何気に真面目なんだよな。ちゃんと期日までにレポートも提出してるし。」

-ホント、チャラいのかと思っていたけど、意外に真面目。

「そういや、今年の4年生、まだ就職決まってないひと多いらしいな。」
「うん、聞いた。そんなんじゃオレ達の就活なんて無理だろ。」

二人で唸りながら教室へと入って行く。

昔のコネで入れる時代は終わったのか、よほど強いバックがいないと難しい。アルバイト先に、そのまま就職する人も多いと聞いた。

将来に不安を抱えているのは、自分だけではないが、今の真咲にはもう一つ不安材料があった。広斗の事を考えると、自分がこの先やるべき事がなんなのか、それも分からない。

スーパーヒーローでも無いのに、誰かを守りたいなんて、自分でも可笑しくなるけど、思ったもんは仕方がない。
それも、相手が男だ。普通は、オレの片思いで終わるんだけど、広斗は恋愛は別にして、男とセックスしてたから、付き合えてしまった。

授業の間、そんな事を考えていたら、あっという間に終わってしまい、帰りがけに、高木がやってきて
「青木って就職しても、やっていけるのかなあ。」と、こぼす。
「…?何が?」と聞くオレに
「いや、アイツ誰かと一緒じゃないとエレベーター乗れないだろ。今は中野がいるけどさ…」

-そうだった。
もし女の人と二人になったら……

考えてみたら、今の環境の方が特殊で、卒業したら二人でいられる時間なんかないだろ。
ましてや、オレが広斗を守りたくても、別々の会社で、どうするんだっての。

真咲の不安材料は、更に広がる。



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