『君と まわり道』 41


 ファミリーレストランの中は、休日だという事もあって家族連れが目立つ。
時間はすでに8時を過ぎていて、家族の夕食にしては遅いような気もするが........。

オレの家族は休日もバラバラで、たまの夕食はホテルのディナー。一応着る服にも気を使う訳で。形だけの家族って感じで、これと言って会話も無い。
それに比べると、ここに居るみんなの顔は楽しそうだし、家族の会話もそれなりにあるようで.......。
まあ、思春期の子供に関しては、携帯に目がいっている事も多いが。親の話に相槌は打っているようだった。

「腹いっぱい。」とオレが言って拓海の顔を見る。
「俺も。.....実はファミレスって久しぶり。仕事中は会社の近くに来る弁当屋で買うし、夕飯は自炊だもんな。大学の時にみんなで行って以来かも。」
拓海も嬉しそうな表情を浮かべた。その顔を見るのがオレは好きだった。
いつもはあまり感情を剥きだす事のない男。オレがバカをやっても上目ずかいに口角をあげるぐらいで。
だから、オレは自分の葬式にも平然とした顔で参列すると思っていたんだ。なのに.........


「これからは、こうしてアツシと飯が食えるな。前とは違った感じで。」
「........、うん。」

なんだか変。ちょっと神妙な顔つきの拓海を眺めるが、その先に繋げる言葉が出て来ない。

「ひとつ言っておきたい事がある。」
そう言われて、一瞬で感じ取ったイヤな予感。拓海が真面目な男だっていうのは知っている。前に居候した時は、成り行き。
でも、今度一緒に住むっていうのはある意味覚悟がいるっていうか...........。

「.......何?」
こんな場所で、重たい話はごめんだ。でも、聞かない訳にもいかないし.......。

「今から、お前の家に行く。」

「.........は?」

「実家だよ。忘れた?ここから車で5分だ。」

「........マジ?なんで実家?........嘘だろ、行かねぇよ。」
オレは頭が真っ白になった。2年前に追い出されてから一度も帰っていない。あの日の母親の顔は今でも覚えている。

「もう電話した。今日は二人とも休みだって言ってた。だから俺が連れて行くって言った。」
拓海の顔を見ると、普通の会話のように表情も変えないで話す。

「アツシはしゃべんなくてもいいよ。でもさ、自分の大事にしていた物は持って来い。服と靴だけじゃなくってさ。」

「拓海.........。」

「ちゃんと暮らそうぜ。二人の居場所になる様に。」

「..............」

オレは返事が出来ないまま。でも、会計を済ませると拓海の運転で実家へと向かう。
此処へ来た時の楽しい気持ちは完全になくなり、腹の底からじわじわと湧き出る嫌悪感がオレを包み込む。
助手席で一言も発しないまま、オレを乗せた車は見知った家の前で止まった。





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