『君と まわり道』 42


 実家の玄関前には、この家が建てられた時に植えたという木が2階のベランダまで伸びていて、そのベランダの先にオレの部屋はあった。夏になると、セミの鳴く声で起こされて、毎日この木を根っこから切ってやりたいと思っていたんだ。

首をあげて2階に目をやると、拓海は玄関で手招きをする。
インターフォンに指を付けると力強く押した。

ピンポ~ン・・

と、一度鳴っただけなのにドアがすぐに開かれて、伏し目がちに中からオレを見る。

「こんばんは。すみません夜分に・・・」
「・・・こんばんは。」

拓海の言葉に、少し覇気のない挨拶をすると、母親が「どうぞ。」といって中へ招き入れる。
「あっちゃん、.........」
オレの名を昔ながらの呼び方で呼ぶが、その先の言葉はない。時折俯いては又オレの顔を上目ずかいに見た。

「お父さん。拓海くんとあっちゃんが、.........」
リビングへと案内されるが、ソファーでくつろぐ父親が立ち上がってオレと拓海を見た。オレはじっと顔を見るなんて出来なくて。
拓海の後ろで顔を伏せて突っ立っているだけだった。

「元気そうで.........、2年ぶりか。」

「............................................」

唇の端をキュって噛んだまま、オレは俯いていた。本当に何を話していいのか分からなかったし、拓海がしゃべらなくてもいいって言ったんだ。

「どうぞ、座って。何か飲み物でも・・・」
「いえ、今さっき食べてきたばかりで、喉も乾いていませんから。どうぞお構いなく。」
拓海が母親に微笑みながら言った。

「あの、お電話したように、僕とアツシくんは一緒に暮らす事になりました。それで、彼の荷物を取りに伺ったんです。」

「あっちゃんの部屋はあのままになっているから。お母さん、気が動転してあなたの物を投げ捨てたけど、部屋にある物を処分したりはしていない。見るといいわ。」
申し訳なさそうな声で言う。

「早速上に行ってもいいですか?」
そういう拓海に、「どうぞ、使えるものは持って行ってくださいな。」と母は言った。あの日の顔付とはまるで違う。
鬼のような形相で、オレを蔑んだ様な目で見ていたっていうのに.................。

「失礼します。」
そう言うと階段を上がり、奥のオレの部屋へと向かった。

ドアを開けると、そこは本当に2年前と変わらない景色。



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