『君と まわり道』 44


 拓海が乗せた手を振りほどくと、オレは父親の顔を見る。
呆然と立っているのはオヤジの方で。ゲイの息子にかける言葉が見つからないんだろう。

「何も言わなくていいよ。.....オレを気持ち悪いと思ってるんだろ?!それは言わなくても分かるから.....。」

「いや、....私は、そんな事は.....。」
戸惑うのは当然。オレ自身も受け入れるのに時間が掛かった。否定しながらも、どうしたって周りの連中のように女の子を性の対象としては見れなかったんだ。

「テレビに出ている人みたいに、なよなよしてないじゃない!どうしてあっちゃんが...........?お母さんの育て方が間違っていたのかしら。放って置きすぎたから.........。」
母親はまた過去の話を蒸し返す。そんな事は関係ないっていうのに............。

「あの、アツシは別に女っぽい訳じゃなくて.......、」と、拓海がオレをフォローしようとするが、説明に困ってしまった。

「もういいよ、拓海。オレだって説明出来ないんだ。言葉に表すのは難しすぎる。」
「けど、.........」
尚も両親に説明しようとする拓海だったが、オレは床に置いたバッグを肩に担ぐと、「分かり合えなくても仕方がないと思う。オレは生きてきて後悔はしていないし、追い出された時は憎んだ。いや、さっきまで憎いと思ってた.....。でもそれは、オレが子供だからで、何処かに甘えがあったんだと思うんだ。」そう言って背中を向けると、拓海の方を向く。

「アツシ、いいのか?」
オレに向かって言うから「うん」と頷いた。
親子だからって、必ずしも分かりあえるとは限らない。どうしても受け入れられない事だってある。オレは、親の思うような息子にはなれなかったって事だ。期待を裏切ったのかもしれない.............。

「あっちゃん.........。」
「淳............。」

両親が小さな声でオレの名を呼ぶ。
「ごめんなさい。期待に沿えなくて.......。でも、オレは自分の生き方で生きていくし、自棄になったりなんかはしないから。」

二人にそう告げると、リビングのドアノブに手をかけて出ようとした時だった。
「俺がちゃんと見てますから。アツシが変な事にならないように..........、だから安心してください。」と拓海が言った。

「おい、..................!」と振り向きながら拓海を見るが、その眼差しが真剣でオレは口をつぐんだ。

「ありがとう、よろしくお願いね。」
「頼みます。」

両親に言われてまんざらでもない顔の拓海。
オレは、「じゃあ、これで...............。元気で。」と両親に声を掛けるとドアを開けた。
後から付いて来る拓海の気配で、オレは不安を感じる事が無くなる。むしろ守られている感じが強くて、ここへ来ることをあんなに拒絶していたのに、不思議なものだと思った。

「夜分に失礼しました。おやすみなさい。」
玄関で両親に声を掛けると、拓海がお辞儀をする。
「おやすみなさい。」
オレも隣で同じようにお辞儀をすると、「おやすみ.........。」と両親の声。
なんとなくしこりは残った感じだが、それも仕方のない事だと思う。いつか、普通に話せる時が来るのかどうか..........。とにかく、今日の所は拓海に感謝だな。

「................、ありがと。」
車に乗り込むと、エンジンをかける前に拓海に礼を言う。

「別に......、アツシだけの為じゃない。俺もちゃんと言っておきたかっただけ。」

「え?..........何を?」

「ずっとアツシの事を見てるって話。」
ハンドルに手を掛けると拓海がこちらを向きながら言った。

「あ、ぁ..........なんか監視されるみたいだな。」
「そういうんじゃなくてさ、.............傍に居るからって意味だろ?!何なら爺さんになる迄でもいいぞ。」

拓海が言い終わるとブオン、とエンジンをかけた。

「.....................」
オレは一瞬間があいて、その後少しだけ頬が熱くなる。





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