『君と まわり道』 46


 拓海が風呂から出てくるまでの間、オレは部屋の隅に畳んで置いた布団と格闘していた。

そうしながらなんとなくだけど、頭の中でシミュレーションをしてみたが、ノンケの男の扱い方が分からない。
オレは乗っかりたい方だから、そうなると拓海はオレを受け入れる方になるわけで...............。

まるで、初体験の小僧のようにドギマギしてしまう自分に笑えてきた。
気分が落ち着かなくて、布団を敷き直しては又畳む。バカな事をしているオレに、風呂から出た拓海が「アツシ?」と声を掛けた。

「え?・・・」
名前を呼ばれて、飛び上がるほど焦ったオレは振り返って拓海を見た。

「ぁ、ああ、何?」

「何って.......、布団で遊んでいるのか?」
濡れた髪の毛をゴシゴシ拭きながら聞くと、座るオレの前に立ちはだかった。

「..........別に、遊んでいる訳じゃ.......」
見上げながら言うが、「早くシャワーして来い。」と言われ、「分かった。」と腰をあげた。
思ったよりも、拓海は平然としている。ひとり焦るオレがバカみたいだ。


さっさとシャワーを済ませると、オレは洗面所で髪の毛を乾かす。天然パーマのくせ毛は、放って置くとヒドイ事になる。
その間にも、部屋で待つ拓海の事をどうしたものかと思い悩むが、こればかりはオレひとりが悩んでいても仕方のない事。拓海に直接聞いてみるしかない。

部屋のドアを開けると、拓海は自分の部屋のベッドに寝転んでいた。

- え?..............え?............ウソ。


’おやすみ’の挨拶も無しで、勝手に寝るとは..............。

オレは、拓海のベッドの横に突っ立って寝顔を見下ろした。
自分が描いたシミュレーションには、勝手に寝てしまうなんてなかった。だから、そっとしておけばいいものをつい、腰を降ろすと意を決して布団の中に潜り込む。

顔だけ拓海の方に向けると、瞼が開かないかじっと見た。が、一向に開かなくて..............。

- マジで寝てやがる。記念すべき日だっていうのに............。

ちょっと意気込んだ自分が恥ずかしくなる。拓海にとっての今日の日は、特別な日って訳じゃないんだな。
家出同然のオレを実家に連れ帰って、両親の了解のもと同居するのを知らせたってだけの事か。
’俺が傍で見ています’なんていうから、変にプロポーズっぽくて意識してしまった。ホント、バカなオレ。


同じ布団に入ったのに、背中を向けると目を閉じた。
すると、「明日は月曜日だから、身体がキツイのは困る。金曜日まで待て。」と、オレの頭の後ろで声がした。
首を回そうと動かすが、そのまま背中に抱きつかれ、オレは拓海の体温を背中に感じながら眠る事になった。
「.........金曜日、だな。」
「うん、おやすみ。」
「.........おやすみ.............。」

枕もとの電気を消すと、暗闇に慣れない目の奥で、自宅の玄関前の植木がそびえ立つ景色を見た。
何気なく見ていた景色。それが、いつしか遠い過去のものとなり、あそこへ戻る事もないのだろうと感じる。少なくともオレは此処で拓海と暮らしていくんだ。あと何年、ここに居るのかは分からないが、何処へ行ってもオレの傍には拓海がいる。居てほしいと思う。
背中に抱きつきながら、オレの腹に滑らせた拓海の腕をそっと掴む。触れた肌が暖かい。でも、今夜はおとなしく寝る事にする。

充分今までも遠回りをしてきたんだ。少しぐらいテンポが遅くたって構やしない。どっちが上とか下とか.........、ヤって見なけりゃ分からないもんな。

ひとりでニヤケると、そっと瞼を閉じた。






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コメント

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きつ……(笑)

前に44話まで読んで、眼が悪いから、そのうちボーと視界がボンヤリして断念。
久々に眼精疲労を直して、参上いたしました。ittiさん、こんにちは。
けど、これはないっすよ(笑)
金曜日まで5日間もオアズケなのに、背後から抱き締めるとかキツ……(´;ω;`)ウッ…
「それなら、いっそ触れないでくれぇえええっ」とか思ってしまいそうなシチュに、
私はアツシに同情票1票入れさせて戴きます(-_-;)