『君と まわり道』 50


 しばらくして、昼食から戻ってきた山野辺さんは、通路の向こう側に行くとオレのディスプレイを眺めていた。

「どうですか?」と尋ねるが、「う~~ん。」と首を傾げるだけ。
- アレ?いまいちだったのかな・・・?

オレもちょっと心配になって、隣に一緒に並ぶと自分のディスプレイに目をやった。

- 完全に周りから浮いている。 - 

涼し気なイメージには程遠い、どちらかと言えばポップモダンな感じ。
「.........だめッスか?いいと思ったんですけどねぇ........。」
少々凹み気味のオレに、「ま、いいんじゃない?しっかり売ってよ?!」と、背中をポンと叩くと言う。

「....はあ。」
軽く返事をしたオレは、向かいのショップの女性と目が合うとお辞儀をして戻って行った。

遊び心のあるシャツや小物は、それ一点だけでも充分オシャレに見えるし、大好きだ。
万人受けはしなくても、’好き’を共有出来る人が居れば嬉しい。それを手に取って買ってもらえたら尚更だ。


その日は、月曜日という事もあって買い物客は少なかったが、ショップ店員らしき人が入れ替わりに覗きに来た。
みんな暇なんだろう、よその店の視察をしているようだった。オレも山野辺さんに断りを入れながら、たまに他所を覗きに行く事がある。
その店のコンセプトによって、打ち出すカラーが違うから面白い。
来た人と、商品について話をするのも楽しいし、客の入りがどうとか、同じ職業ならではの会話も楽しんでいた。



* * * 
その晩、時間通りに仕事を上がったオレは、自転車に跨って途中のコンビニで弁当を買いアパートへ戻るが、ふと、拓海は何を食べるんだろうかと気になった。

- 京都って言ってたよな.......。
出張って事は、向こうの会社の人と食事に行ったりするのかなぁ。
まさか、クラブに連れて行かれるとか............、キャバクラ.............?!

何故か下世話な想像をしてしまったオレは、ブルブルッと頭を振ると着ていた汗臭いシャツを脱ぐ。

シャワーを浴びてスッキリすると、買ってきた弁当を開ける。が、その時テーブルの上に置いた携帯が鳴ったので箸を置いてそれを取った。

- - - 拓海?!- - - 

「はい、..........」
拓海の名前が表示されて、ちょっとビックリしたが返事をする。

「あ、ゴメン。今晩遅くなりそうでさ、電話出来ないかもしんないから、今してるんだけど。お前、生八つ橋好き?」
声の後ろが騒がしいので、外で掛けているんだろうが、何故に生八つ橋??

「は?別に好きでもキライでもないけど、何処から掛けてんだよ、騒がしいなぁ。」
「ああ、ここは鴨川のナントカって店の近く。でさ、会社の人が生八つ橋をお土産にってくれたんだけど、俺キライなんだよ。だからお前食べるのかと思って。食べるならもらって帰るから。」

「・・・・・なんか、よく分かんないけど、何でもくれるってモンは貰って来い。」
「分かった、じゃあ、5箱貰っとくわ。じゃあな。おやすみぃ~。」

「・・・・・・」

全く訳の分からない電話の内容で、オレも唖然とする。
生八つ橋は分かった。明日5箱貰ってくるらしい。
で、鴨川のナントカって店?そこへ今から行くって事か?その店に行くから今夜は電話出来ないかもって、今して来たんだ?!

・・・・・なんだよ!やけに楽しそうな声しちゃってさぁ、アイツ酒弱いのに、又倒れやしないか?・・・・・

先日の事が頭をよぎると、弁当に箸をつけるのをためらった。

お土産の事で、わざわざ電話なんかしてきて...........
行く前にも店までオレの顔を見に来て.............

............拓海って、あんなキャラだったっけ?




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