『君と まわり道』 53


 スラックスのポケットの中でスマフォが振動して、オレは手に取ると画面を見て相手を確かめ通話にタップした。
「は~い、今どこ?」
一応、辺りを確かめながら聞く。声の主は拓海で、約束の時間から10分が過ぎていた。

「悪りぃ、会社に寄ったら色々捕まって.........、今から出るとこ。あと10分待って。あ、それか先に行ってるか?!」
拓海が焦る様子で話すけど、これ以上ここに立っているのもイヤだし.....。
「先に行ってていいんなら。けど、何処に行けばいい?」
オレは少しだけテンションが下がってしまい、拓海に対して無粋な言い方をしたかも。

「.......怒ってる?」
「は?.........別に怒ってなんか..................、で、何処だよ、場所は。」

「..............やっぱり怒ってんじゃん。」
「怒ってねぇから、さっさと場所を教えろ。」

本当はムッとしていた。デートっぽくて機嫌よくなっていたから、待ちぼうけを食ってイラついたんだ。
そんなオレの性格を知ってか、「じゃあ、’マシュー’で待っててくれ。すぐ行くから。」と簡単に告げると電話を切った。

- はぁ?..........マシューに行くんなら初めから言えっつーの!!

わざわざビルの前で待ち合わせなんていうから、何処か別の新しい店にでも行くのかと思っていたら..............。
勝手知ったる、ってヤツじゃないか!

なんだか一人で浮かれた自分が悲しくて、オレは地面を蹴りながら行き慣れた店に向かう。

* * 
店の中は、平日という事もあって案外混んではいなかった。すぐに席に案内されると、オーダーは連れが来てからにするとウェイターに告げて入口に目をやる。ここは知り合いに会う事があったし、そう思うとなんとなくソワソワしてしまった。

別に、オレが拓海と二人で食事していたって変ではないだろう。
昔のオレならそう思う。ただ、...........今のオレは、拓海を好きだと自覚していて、些細な事にも敏感に反応してしまいそうで、それを周りに悟られるのが嫌だった。オレひとりなら、ゲイって知られてもいい。面倒くさいが、そこはやり過ごせば済む話。
けど、拓海がオレと同じだと思われるのはイヤだった。


入口をぼんやり眺めていたら、ドアが開いて拓海の顔が見える。
ドアの所できょろきょろと辺りを見廻しているから、「あ、.......」と、思わず声が出そうになるのを堪え、わざとらしく手を上げてここに居る事を知らせた。

「ごめんな。」と謝りながら向かいの席についたが、荷物が少なくて「あれ、お土産のヤツは?生八つ橋5箱。」とオレが聞くのにキョトンとした顔をしていた。
「お客さんに貰ったんだろ?」と聞くが、「ああ、アレな。まあいいじゃん、俺キライだし。荷物になるからさ。」と言う。

「いいけどさ、オレも別に期待していたわけじゃないし。」
そう言って、メニューに目を通すとウェイターを呼んだ。





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