境界線の果てには。(037)

 冷蔵庫から取り出した水を喉を鳴らしながら飲むと、残りを広斗に差し出す。
ありがと、と言って美味しそうに飲んでいるのを見ながら、真咲は自分の頭を拭いた。

「誰と行ったの?」広斗の顔は見ずにゴシゴシと髪を拭きながら聞いた。

「高校の時の同級生。そいつは専門学校行って今年就職したんだ。それで仕事の話聞いてた。」

「へえ、そう・・・・で、何人で盛り上がったの?」

「んーーー多分4人か、な。・・・・タクシー相乗りして、俺が最初に降りたんだ。」

「その、もと同級生はお前がなんで倒れるのか知ってんのか。」
「・・・や、言ってない。事故の事は知ってるけどさ。」
広斗は、バスタオルをターバンみたいに巻き付けると、下着を取り出して着替え始めた。

-真咲の言いたい事は分かってる。俺が何かの拍子で倒れたら、どうするんだって言いたいんだろ。

親に叱られるのが分かってて、うな垂れた子供の様に広斗は背中を丸めて座った。

「別に、オレに言いたく無いならいいけどさ、誰と飲みに行っても。・・・けど、こういう風に脅かされるのは勘弁してくれ。」
真剣に言われて、広斗も反省する。

無意識のうちに真咲に頼るくせがついてしまった。
「ごめん。・・・悪かった。今度は、友達にも言っとくから・・・・真咲に迷惑掛けないようにするよ。」

それを聞いた真咲は、何も言わず濡れたバスタオルをクシャクシャッと丸めると、洗面所へ行ってしまった。

そして、そんな真咲の後ろ姿をただ目で追うだけの広斗だった。




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