『寄り道しないで帰ろうよ。』 205号室-16



 「ところでさ、さっき軟膏持ってるか聞いた時、お前切れ痔の薬ならあるっつってなかった?!」

テーブルに広げたピザ屋のトレーから、チーズのたっぷり乗ったピザを一切れ掴むと、向かいで片手をビニールに包んだアツシに聞く。さっきは焦ってたから冗談だと思ってスルーしたけど、俺たちまだ24歳の若者だぞ。痔とか.........、あり得ない。

「ああ、あるよ。...............なに、拓海も使う?」

「は?ウソ、アツシ、痔なの?」

「.............、まさか。そんな危険なプレーしないし。そんなのでヤったら出血死すんだろ!」

「だよな?!」

 やっぱりふざけてるんだと思っておもいっきりかぶりつくと、滴るチーズを慌てて指で受け止めた。

「でもさ、薬はある。ミサキがくれたんだ。」
 アツシもピザを一切れ取ると、俺の顔を見て言った。

「なんでミサキ?ここに引っ越す前に会った時?」
「そう、あいつさ、拓海が傷ついたら大変っつって、オレに寄越したの。」
「...............、なんか、明け透けなんだな、お前らって。つーか、俺が下って思ってるんだ?!」
 ミサキがそう思っても仕方がないのかも...........。アツシはずっとそうだったし。

「まさかオレがヤられちゃってるなんて、思ってもみないだろうな。だから、そっと頂いておいた。それに、いつか拓海に使うかもしれないし。」
 そう言うと、アツシが手についたピザのソースを舌先で絡めとる様に舐める。

「は?.............」


 俺は、それ以上何も語らずに、さっさとピザを口に詰め込んでコーラで流し込んだ。深く掘り下げると、ヤバイ気がして........。


 その晩は、結局ピザの宅配を頼んで、キッチンもリビングもしばらく煙いので窓を全開にしておいた。冷静になったら、あの煙で火災報知器が反応しなくて良かったと思った。もし鳴っていたらマンション中大騒ぎで、今頃のんびりピザなんか食ってられない。

「そうだ、薬どうする?返してこようかな。」
 俺がアツシに聞くと、「いいんじゃない?今度新しいの買って帰そうよ。その方がいいって。」といった。

「ああ、そうだな。じゃあ、俺が明日買って来るよ。」
「うん、ごめん、ヨロシク。」

 俺は、テーブルの上を片付け終わると、ソファーにドスンと腰を降ろす。
 アツシは火傷が気になるのか、ずっと片手で支える様にしていて、俺がソファーにいても隣にはこなかった。いつもなら必ず俺の膝の間を割って身体を捻じ込んでくるのに.......。

「痛むか、やっぱり。」
 俺が聞いてやると、「そりゃあな、でもすぐに治るだろう。」と言って苦笑いをした。

「来いよ。...........ここに。」
 アツシの方に片手を差し伸べると、もう片方は自分の膝の間をトントンと叩いた。
 その手を取る様に近づいて来ると、アツシはソファーに座る俺の膝の間にクッションを敷くと腰を降ろす。そうして、頭を俺の腹に乗せると痛い方の手を上げた。

「知ってた?怪我した場所ってさ、心臓より上になる様にしておくといいんだって。手ならこうやって上げておく。」
 そう言いながら俺の腹を撫でる様に、アツシの手が這う。
 俺は肘を掴むと、そのまま下へずらして行きアツシの脇に自分の指を指し入れた。
「風呂、後で一緒に入ろ。頭洗ってやるから。」
「うん、サンキュ。」

 そのままの体制で、暫くはテレビを観ていた俺たちだが、眠くなってもいけないので、俺はアツシの腕をさすりながら降ろすと、「シャワー行こうぜ。」と言ってアツシを立ち上がらせた。





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