『寄り道しないで帰ろうよ。』 205号室-18



 シャワーのお湯は止められたまま、籠った湯気が二人の身体にまとわりつく。
 片手は頭の上にあげたアツシ。その手首をそっと掴むと、俺はアツシの頬から耳朶へと舌を這わす。アツシの湿った耳の奥を舌の先で捏ねる様に突くと、「ん、」という吐息が漏れ出した。
 
 アツシの手と俺の手が、互いのモノを包み込んで上下に扱くと、達したいという欲望だけが俺の頭の中を支配する。
「ん、ん、.................もう、いい、か?」
 耳元で囁くように言う俺に、「い、いよ。」と、アツシも途切れるような声を出した。

「.......あ、.........ん...............ぁ、...............ッ...................」

 暫くの間、小刻みに震える身体を抱きしめ合うと、俺たちは二人同時に果てた。




 風呂から出た俺は、アツシの手にはめたビニールを外す。洗面所の水道でもう一度綺麗に洗い流すと、少しだけ赤みが引いたような気がしてホッとした。
 リビングで貰った塗り薬を塗り込んでおくと、またビニール袋に包んで手首で緩く止める。
「これで朝までいいだろう。寝相が悪いと外れるかもしれないから、おとなしく寝ろよ?!」
 立ち上がって寝室へ行こうとするアツシに言えば、俺の目を見てニッと笑った。
「拓海が襲わなきゃ、おとなしく寝られるし。」
 そう言うと、フフン、と鼻で笑いながらアツシは寝室へと行く。


 ブルーグレーの新しいシーツが敷かれたベッドに横たわると、すでにこちらを向いて目を閉じるアツシの顔を見た。
 前に、上司の山野辺さんから電話をもらい、アツシを駅ビルまで迎えに行った事を思い出す。熱があって自力では帰れないと言われ、俺の心臓は針で刺されるくらいチクチクと痛んだ。丁度昼休み中で、すぐに駆け付けてアパートへ連れ帰ったが.....。

 長い付き合いの中では、病気になって寝込んで会えないという日もあった筈。中学高校と、そんな事は気にした事もなかったが、俺の中でアツシの存在が大きくなればなる程、些細な傷さえ心を痛める事になる。それだけ想う気持ちが深くなったって事なんだろうか.....。

 火傷の手を庇うように包んだアツシの手の甲に、そっと俺の指を乗せてみる。
 ほんの指先が触れているだけなのに、こんなにも安心できるなんて。この先俺は、アツシを手放す事なんか出来ないだろうな、と思った。




 

 

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