境界線の果てには。(039)

濡れたままの髪の毛をかきあげながら、ひとりベッドに腰掛けると、いい様の無い脱力感に襲われた。

-さっき迄、肌を合わせていい気持ちになっていたのに………。
なんか、上手くいかない。

広斗は、自分が真咲の優しさをひとり締めしているようで、気分が良かった。
だから、甘えても許されると思っていた。

-そもそも、真咲が俺にべったりなのが悪い。
俺は別れるつもりだったのに………。
強引に引き止めたのは、アイツだ。

自分の否を認めない広斗は、立ち上がってさっき真咲が拭いてくれた床を眺めた。


-自分で拭けるって……お節介なんだよ。


「自分の後始末は、自分でするってーの!」

口に出して言った後、雑巾を持ってくると床に膝をついて拭き出す広斗。

…へ、ッブシッ…

大きなくしゃみを一つして、黙々と拭いた。

しばらくして、時計を見ると昼を過ぎていたので、空腹に気づいた広斗が片付けを止めてキッチンへ行く。

冷蔵庫を開けるが、これといって食べる物がなかった。

先日のステーキが、頭に浮かぶ。

それでも、今日ばかりは胃にやさしい物を食べなければ、と思って取り敢えず米でも炊くか。と炊飯器に手を伸ばした。

-あれ?

見るとスイッチが入っていて、蓋を開けるとごはんが炊けていた。




……………。



ほんの少し前、広斗の心はトゲが刺さった様にチクチク傷んでいたのに、今では温かい湯気と美味しいごはんの香りに包まれて、目頭が熱くなっている。

-真咲が悪いんじゃない、…俺がバカなんだった。


蓋を閉めると同時に、広斗の目尻から涙が零れて、鼻の奥はじんじんと痛んできた。

「…まさきィ~…」呼んだけど、返事は何処からも聞こえなかった。











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