『寄り道しないで帰ろうよ。』 205号室-35


 --------マイッタ--------


 今日は出張だというのに、昨夜の頑張りが今頃腰に来た。西さんと電車に揺られて千葉のT百貨店に着くころには、俺の腰も痛みだし立っているのが辛くなる。

「山城さん、少し痩せました?」
「え?いいえ、変わらないと思いますが。」

 担当の恵比寿さんという女性に言われて、思わず上から自分の身体を見下ろすが、特に体重を測る事もしていないので良く分からない。痩せたというよりも、やつれて見えるとしたら、それは昨夜の行いのせいだろう。

「山城くんは、最近引っ越しをしたんで疲れているのかも。片付けとかいろいろ大変だもんね。」
 西さんは、フォローしたつもりなのか、恵比寿さんにそんな報告をするが、俺としてはそっとしておいてほしかった。
「え?!ついに結婚とか?」
 恵比寿さんが目を見開くと聞いてくる。その眼差しが痛い程突き刺さると、俺は「まさか、無いですよ。」と言った。

「なぁ~んだ。せっかく既婚者同士、仲良くなれるかと思ったのに残念だわ。それにうちの営業の女の子が煩くて、山城さんが独身の内はみんな殺伐としてるのよ。抜け駆けは許さないとばかりに牽制し合っちゃって。私は既婚者だから問題外らしいけれど。」
 半分冗談交じりに言うと、恵比寿さんはテーブルの上に並べた商品サンプルを手に取った。

「山城くんはどこでも人気があって羨ましいよ。」
 西さんが俺を見ながら鞄からファイルを取り出す。テーブルの上の輸入した化粧品サンプルに先日翻訳した説明書きを添えると、ひと通り並べ終わって恵比寿さんを見た。

「この後、飲みに行きますか?山城くんが店を見つけてくれたみたいですけど...。」
 西さんの誘いで、「あ、いいわねぇ、最近は誰も誘ってくれなくて、やっぱり結婚すると周りが変に気を使うのよねぇ。別に飲みに行くぐらい、旦那だって怒らないのに.....。」とつまらなさそうに言った。それから笑みを浮べると、「嬉しいなぁ、今日は思い切り飲んじゃおうかな!」そう言って口角をあげる。

 俺は西さんと顔を見合わせて、なんとなく今夜は終電で帰る事になるだろうと想像した。
 俺にとっては最悪だ。益々腰の痛みが強くなりだして、早く帰りたいっていうのに.....。




 案の定、本当に久々の飲み会だったのか、恵比寿さんは同僚のもう一人の女性を連れてきて、かなり早いペースで飲み始めると一気に酔っぱらってしまった。
 俺と西さんが二人がかりでタクシーに彼女を乗せると、同僚の方に頼んで送り届けてもらう。
 結局、ぎりぎり終電に間に合う格好にはなった。

「まいりましたねぇ、恵比寿さん上機嫌で新しい商品の発注もしてくれるって言ってましたけど、明日起きたら忘れているような気もするし.....、朝一で電話入れておかないと。」
 電車の中で西さんに言いながら、俺は腰の痛みをこらえていた。

「山城くんはあまり飲まなかったね。前から強い方じゃなかったけど、本当に体調良くないの?」
「え?そんな事はないですけど、ちょっと腰が痛くって。」
 座ったまま腰をさするようにすれば、クスッと笑った西さんが「モテる男はつらいねぇ。」と意味ありげな発言をする。

「や、そういうんじゃないんで.......。」
 俺はさらりとかわしたつもりだったが、頬が赤くなったような気がして、「なんだか暑いですねぇ。」と言って額の汗ををぬぐった。



 

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更新 遅刻しましたぁ。。。(~_~;)

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